「相対性理論への道」

★Hanoch Gutfreund and Jürgen Renn, The Road to Relativity: The History and Meaning  of Einstein's "The Foundation of General Relativity" (Princeton University Press, 2015)

散歩がてら訪れた紀伊國屋書店新宿南店(洋書部)で入手。

アインシュタインの「一般相対性理論の基礎」草稿とそれに対する解説をつけた本。

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ご覧のように向かって左ページに草稿の写真が配置されています。右ページはコメンタリーです。草稿はドイツ語で書かれており、その英訳が巻末につけられています。導入として「アインシュタインの知的な旅(オデッセイ)」という文章もあり読ませます。

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 こういう具合に原文を読み解いてみせてくれる本をもっと読みたいものだ、と思いました。

 

press.princeton.edu

じんぶんや「知と言葉の連環を見るために」小冊子の全文公開

2016年の秋に紀伊國屋書店本店の人文書コーナーで開催したじんぶんや「知と言葉の連環を見るために」のためにこしらえたミニブックガイドの全文が、同書店のウェブで公開されました。

『「百学連環」を読む』(三省堂)にちなんで選んだ74冊について短いコメントを書いております。ご笑覧くださいませ。

ブックフェアで本を選ぶのはほんとに楽しいので、機会があったらまたしてみたいと思います。

www.kinokuniya.co.jp

「百学連環」を読む

「百学連環」を読む

 

 

すごいよ、yPad!(あるいはノートについて)

寄藤文平さんがつくったスケジュールノート「yPad half X」(朝日新聞出版)に、あれやこれやの予定を書き並べて整理してみたら、目の前のもやがぱーっと晴れるように見通しがえらいクリアになった。

……のはよかったのだが、半ば無意識のうちに見ないようにしていたかもしれない仕事予定の全貌がたちあらわれて打ち震えている。

すごいよ、yPad! 

 

■ついでながらノートについて少々

この30年ほど電子機器も含めていろいろ使ってみた結果、わたくしの場合、全部1冊に書くのがよいという暫定的な結論に達していまにいたる。

一時期、用途別にノートをつくったり、ルーズリーフを使ってファイリングシステムを組んでみたりしたのだけれど、結局どこに何を書いたのかが分からなくなって最後まで使われないノートの山だけが残った。

新しいノートを買うのが好きということもあって、文具店でよさそうなノートを見かけると「これは何々に使うノートにしよう」とかいって理由をつけて入手するわけである。

他方で各種の電子装置も使ってきたが、これもちょっと油断しているとどのファイルがなんなのかが分からなくなる。ファイル名やフォルダ名などにもかなり気を遣っているのだけれど、それ以上にファイル数がアホウのように増えててゆく。

また、なにかを書こうと思い立ってから装置のスイッチを入れて書ける状態になるまでの間が、年々短くなっているとはいえ紙のノートには及ばないと感じる。見方を変えると、なにかを思いついたら、ページを開いてさっと書くという最小の手間に近づいてくれたらもう少し違うのかもしれない。

 

――というので、ある時期から、ともかく「このノートに書く」というスタイルで、1冊に書くことにしてみた。

この10年くらい、これで困ったことはない。ものぐさなわたくしには、「とにかくこのノートに書く」という単純さが合っているのかもしれない。

使うノートは、電車で立ったままでも書けるように表紙がかたいものを選んでいる。いまのところモレスキン(クラシックハード横罫MM710黒)に落ち着いており、これまで20冊ほど使ってきたところ。

 

ただし、スケジュール管理は難があった。 

そこでGoogleカレンダーなどを併用しているのだけれど、これもデジタルの弱点といおうか、自分で意識してアクセスした時しか目に入らないのが難点である。登録した予定の事前にGoogleカレンダーからプッシュ通知が届く機能もあるのだが、結局アクセスする手間自体が減るわけではない。

といっても、そもそもたいして仕事があるわけじゃなし騒ぐほどのこともなし。『文体の科学』を出した後、2014年の暮れあたりから少しご依頼が増えつつあったものの、一時的なことさねとたかをくくっていたところ、その一時がどうしたものか長引いて、2016年は自分でも全体像を把握しかねる状態になったのだった。

というのでどうすべきか考えていたところ、「そうだ!」と気になっていたyPadを手にしてみたという次第。そして話は冒頭に戻る。

 

yPad half X

yPad half X

 

  

モレスキン ノート クラシック ハード 横罫 ポケット MM710 黒

モレスキン ノート クラシック ハード 横罫 ポケット MM710 黒

 

 

 

ダリや

今朝、隣家の人が、外に出て「ダリ、ダリ、ダリ」と声を上げているので目覚めました。

なんだろうと思って聞くでもなく聞いていると、「こっちへおいで」「そっちは危ないよ」など、いろいろなことを言っています。

「そうか、お隣さんではダリを飼ってるのか……あのヒゲを……」

と納得して、再び眠りに落ちようかというところ(なにしろ明け方までお酒を飲んで夜更かししていましたから……)、再び、「ダリ、ダリ、ダリ!」と、今度は先ほどより少し声が大きくなっています。ちょっと苛立ち混じりのような、でもそれを抑えようとしているような、そんな声の調子に聞こえます。

ダリはよっぽど強情な奴なのかな、と思っていると、「ミャーオ」という猫の声。「そう、こっちへおいで!」と呼びかけは続きます。なんだ、猫ちゃんか。

しかし、猫はミャオミャオ言うばかりで、ちっとも呼びかけ主のほうへ寄りつかない様子。私は朦朧とする頭で、「そういえば猫って、呼びかけたらやってくるものなのかしら(犬なら呼ばなくても飛んで来ちゃうけど)」とか、「うちの近所には、猫に紐をつけて散歩をするおじさんがいるなぁ」などとぼんやり連想します。なおも呼びかけが続くなか、「もしかして、隣人殿はその辺の野良猫に名前をつけて呼びかけてるだけなんじゃなかろうか」などと空想が働きもしました。

そうする間にも(って、私はベッドのなかでうだうだしながら空想してただけなんですが)、「ダリ、ほら、こっちだよ」と呼びかけは続きます。「ミャーオ」「ダリ! こっちに来なさい!」

およそ30分近くそんなやりとり(?)があった後で、隣人はとうとう諦めたのか、家へ入ってしまったようでした。相変わらず猫は表で「ミャーオ」と鳴いています。

まさか、お隣さんは猫じゃなくて、なにか別のものに声をかけていたんじゃあるまいか。例えば、ダリとか……そんな空想に頭を占拠されながら、私は再び眠りに落ちたのでありました。

(2013年01月02日、facebookへの投稿から)

 

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古典ギリシア語・ラテン語の教材

★GREEK AND LATIN TEXTS WITH FACING VOCABULARY AND COMMENTARY

「古典ギリシア語とラテン語の語彙と解説つきテキスト」

 

その名のとおり、古典ギリシア語とラテン語のテキストに語彙と解説をつけた教科書を公開しているサイト。このサイトで公開されているデジタルファイルは無料でアクセスでき、紙版はAmazonで販売されている。

著者はジェフリー・ステッドマン(Geoffrey Steadman)という人で、サイトに掲載された略歴によると、アメリカはオハイオ州の公立高校でラテン語の先生をしている人とのこと。

 

語学の勉強をどうやって習慣にするかを説いたページから、ちょっとだけそれとなく訳して紹介するとこんなふう。

大学のような環境の外で生涯にわたってラテン語やギリシア語を読みたければ次のようにしよう。

 

1. 日々達成しやすい目標を設定しよう。

 例えば、1日に5行のギリシア語/ラテン語を読む

 

2. 手の届く範囲で、すぐ目につく場所にテキストを置こう。

 

3. すでに身についている習慣となっているなにかしらの行動に続けて読む習慣をつなげてみよう。

 例えば、バスで座ったとき、コーヒーカップを手にしたとき、ベッドにもぐりこんだとき、など。

 (https://geoffreysteadman.com/5-lines-per-day/ から)

 

どれもシンプルだけれど、本当に重要で、これを実行したら読めるようになると思う。

特に、勉強に使うテキストがモノとしてぱっと目に入るのは肝心。そうでないと、自分で思い出すまで意識がそちらに向かないから。

この場合、デジタルはちょっと不便かもしれない。というのも、普通、デジタルの装置は電源を入れてファイルを呼び出さないと画面に表示されないから。装置がだいぶ優秀になってきたとはいえ、この手間は存外ばかにならない。というのは、本をぱっと手にとってページをめくる手軽さと比べてみると実感できる。

ここから考えると、こんなアプリを考えられる。例えば、ユーザーが一定範囲内に近づくと自動で起動して画面に読むべきテキストを表示する。

これなら目につくところに本が置かれてあるのと似た状態にできそう。この点、本は依然としてとても便利。

3について、私は考えたことがなかったけれど、言われてみたら納得。ある動作に別の動作を関連づけるわけです。AをしたらBという連想が働くように自分を訓練するということだけれど、肝心なことはすでに自分がよく繰り返す動作に関連づけよといっているところかと思う。

とにかく語学は繰り返すことでしか身につかないので、どうやって勉強を習慣にできるかが、実は最大のコツかもしれない。

geoffreysteadman.com

2017年の仕事/購書はじめ

■2017年最初の仕事

年始の挨拶とともに届いたゲラを見ることからスタート。

(文筆職人の仕事始めははやい)

思えば20年くらい前にコーエーでゲームをつくりながらああでもないこうでもないと考えたことを20年越しでようやっと言葉にできた、という感じの文章であります。

詳しくはこの文章が掲載される本の刊行時にお知らせしたいと思います。

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■2017年最初に入手した本

本を買うつもりはなかったんです。たまさか通りがかった池袋で三省堂書店が開いていたから……

右上の『科学史へのいざない』は本日届いた古本。

背後に立っているのは2016年年末に入手した本。

今年も年末にゲンロンカフェで斎藤哲也さん、吉川浩満くんと人文書総まくり鼎談があるかもしれないので、そのつどしっかり記録しておこう(人それを捕らぬ狸の皮算用という)。

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末尾になりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。