2017年の回顧

 さて、毎度のことで恐縮ですが、書いている当人以外にはほとんど意味のない2017年の仕事のふりかえりをしてみます。わたしにとっては、こんな年でございました。

 

★A. ゲーム

・モブキャストとプロ契約更新 

 2015年半ばから勤めているモブキャストは、引き続きプロ契約を結んでおります。プロ契約とは、勤務時間に縛られず必要に応じてやることをやるというスタイルの働き方のこと。ゲームの企画と人材育成に携わっています。ここには書けないけれど、新しいゲームの企画書などもこしらえました。現場や周囲の動きを眺めていると、ゲーム業界はいま、静かな変革期を迎えているのかなという気がしております(そんなことを言ったらいつでもそうなんですけれど)。

 ゲームについては、2018年に久しぶりに本を書く予定でもあります。

 

★B. 講義(定期)

・東京工芸大学「ゲーム学I」「シリアスゲーム論」

・東京ネットウエイブ別科「クリエイター入門」

・よよこ~「ゲームデザイン」

・ミームデザイン学校「デザインベーシックコース」(寄藤文平さんと講義)

 2016年まで十余年教えに通った東京ネットウエイブの専門課程での講義担当を辞めて、時間的には少しゆとりができるはずだったのですが、なぜかそうなっておらず、どこかに時間泥棒がいるに違いありません。今年4度目の担当となった東京工芸大学での講義も今回を最終回としました。

これまで、一橋大学大学院をはじめ、一橋大学、日本女子大、東京工芸大学で各種科目を担当する機会を頂戴しました。たいへんお世話になりました。

 というわけで、専門学校と大学での非常勤講師はいったんこれでお休みです。教育についてはもちろんのことですが、非常勤講師という制度についてもいろいろ考えるところがありました。この仕事に専従している方は、さぞや大変なのではないかと推察します。それにしても、ものを教えるのは勉強になりますね。 

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(東京工芸大学での「ゲーム学I」の板書より)

 

★C. 講義(単発)

01: 東京大学情報学館ゲストレクチャー(石島裕之さんの講義に吉川浩満くんと参加)

02: 「座・芸夢 第19回 飽きないゲームをつくるには?」(DeNA、2017年03月15日)

03: 基調講演「百学連環の計――発見と発想のための結合術(アルス・コンビナトリア)」(SENQ EVENT #5「Lead Japan Summit 〜先駆者と語る日本の未来〜」 part.2 イノベーションを社会実装する里山都市構想、2017年03月22日)

04: 「子供がゲームにハマるわけ――ゲームの歴史としくみからときほぐす」(田口教育研究所、2017年03月25日)

05: 「知は巡る、知を巡る――西周とまわる日本語の旅」(Tsuwano T-space、2017年07月01日)

06: 審査員:「Dev Battle」第1回(ファリアー@立命館大学)

07: 「好きなことは役に立つ」(よよこー、授業参観、2017年10月15日)

 単発のレクチャーは、2016年に刊行した『「百学連環」を読む』(三省堂)にかんするものとゲームにかんするものが中心でした。 

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(「知は巡る、知を巡る――西周とまわる日本語の旅」の様子/Tsuwano T-space Facebookページから)

★D. 対談

01: 松島倫明+山本貴光「サイエンスのゆくえ」(WIRED on WIRED DX、2017年02月13日)

02: 寄藤文平+山本貴光「渋谷のラジオ」(2017年02月22日)

03: 神田桂一×菊池良×仲俣暁生×山本貴光「僕は・文体模写が・好きだ。」(B&B、2017年06月07日予定)

04: 古賀弘幸×山本貴光トーク&サイン会「文字百景 世界は文字で満ちている! ――書の「文体」の不思議に遊び、考える夕べ」(東京堂書店、2017年06月21日)

05: 馬場保仁+山本貴光「「ゲーム教育トーク――『ゲームの教科書』著者2人が語るゲーム教育の今と未来」(「ゲーム業界 活人研」、Social Game Info、2017年06月28日)

06: 三中信宏+吉川浩満+山本貴光「分ける、つなぐ、で考える」(ゲンロンカフェ、2017年09月01日)

07: 鈴木一誌+山本貴光「ページと文体の力と科学」(青山ブックセンター本店、2017年10月14日)

08: 橋爪大三郎+山本貴光「『正しい本の読み方』刊行を機に」(『週刊読書人』2017年10月27日号掲載)

09: 久保田晃弘×山本貴光×大林寛「因果の再編集のためのデザイン」(『エクリ叢書Ⅰ―デザインの思想、その転回』(オーバーキャスト)刊行記念、B&B、2017年12月09日)

10: 神田桂一×菊池良×仲俣暁生×山本貴光「なぜ『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は10万部も売れたのか?」(B&B、2017年12月15日)

11: 加島卓+山本貴光「エンブレム問題から考えるデザインの過去と未来」(神楽坂モノガタリ、2017年12月20日)

12: 服部徹也+山本貴光「来たるべき文学のために――『文学問題(F+f)+』刊行を機に」(『週刊読書人』)

 いろいろな機会にお声かけいただき、出不精の人間としては節操なく話した一年でした。お越しくださったみなさま、ありがとうございます。 

 (加島卓さんとの対談の様子/神楽坂モノガタリのツイートより)

★E. インタヴュー

・「フロントランナー」(吉川浩満と共に、「朝日新聞」2017年02月04日)

・「「哲学の劇場」山本貴光×吉川浩満が『未来よ こんにちは』を語る」(リアルサウンド映画部)

 2017年はインタヴューを受けるという新しい経験をしました。誰かからあれこれ自分についてお尋ねいただくのは、なんとも面はゆいことですね。たびたびあることではないと思いお引き受けしたのでした。

・外山滋比古インタヴュー(『週刊読書人』2017年1月13日号 3172号))

・池澤夏樹インタヴュー「人間とは何か」――その手がかりとしての文学」(『池澤夏樹、文学全集を編む』、河出書房新社、2017年09月12日刊行)

 また、二つのインタヴューを担当しました。話を聴くお相手の作物やお仕事をできるだけ網羅的に見てからインタヴューに臨むという方針でやっているわたくしですが、大ヴェテランのお二人の仕事を限られた時間で網羅できるはずもなく。長きにわたって継続的に仕事をしてこられた方の凄みのようなものも感じる時間でした。 

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(池澤夏樹さんへのインタヴューの準備で二つの全集を見直す)

★F. 本

・『文学問題(F+f)+』(幻戯書房、2017年11月22日)

・『メイキング・オブ・文学問題(F+f)+』(幻戯書房、2017年11月22日)

 2017年の最大の仕事はこの本を刊行したことでした。途中、本当に刊行にこぎ着けられるだろうかと思うこともありましたが、本の内容にかんしては編集の中村健太郎さん、溝尻敬さんに助けられて形にできた次第です。

 『「百学連環」を読む』と同様、昔の文物をいまに甦らせる仕事ということもあって、数年では古びないつくりにしたつもりです。敢えて大袈裟に申せば、言葉を使ってなにかをするすべての人にお役に立つ内容だと思います。いつか機会があったらお手にとっていただけると幸いであります。 

 また、投票の締切間際の刊行であったにもかかわらず、紀伊國屋書店じんぶん大賞の5位に選んでいただいて、たいそう驚きました。ありがとうございます。

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(『文学問題(F+f)+』)

★G. 連載

・「人文的、あまりに人文的」(吉川浩満と共著、第9回-第X回、ゲンロン)

・「人生がときめく知の技法」(吉川浩満と共著、第1回-第21回、webちくま)

・「マルジナリアでつかまえて」(『本の雑誌』2017年10月号、本の雑誌社、2017年09月12日)

  2016年から取り組んでいたゲンロンでの連載に加えて、新たに二つの連載を始めました。「人生がときめく知の技法」「マルジナリアでつかまえて」は、いずれ本にする予定です。

 2018年は予定どおりに話が進んだ場合、あと二つ新たに連載を始めます。

 

★H. 寄稿

01: 「楽天市場の「絶望的な使いにくさ」に隠された意図――深読みウェブ散歩」(「現代ビジネス」、講談社、2017年01月25日)

02: 「切れ切れの意識でデジタルゲームの儚さについて考える十の断章」(『ユリイカ』2017年02月号「特集=ソーシャルゲームの現在」、青土社)

03: 「潜在性のデザイン――コンピュータと表現と人間」(『デジタルメディアと日本のグラフィックデザイン その過去と未来』、誠文堂新光社、2017/02/07)

04: 「理論の理論――世界を理解する方法」(『現代思想』2017年03月臨時増刊号「総特集=知のトップランナー50人の美しいセオリー」、青土社、2017年02月14日)

05: 「町田康の10冊/歌って踊ってシミュレーション、それが文芸ちゅうものやね」(『本の雑誌』、本の雑誌社、2017年03月09日)

06: 「誰よりも私のことを知る――「拡張人格」としてのゲームAI」(『世界思想』第44号2017年春号、2017年04月)

07: 書評:國分功一郎『中動態の世界』(医学書院)(「日本経済新聞」2017年04月29日号)

08: 書評:池澤夏樹『キトラ・ボックス』(『新潮』2017年06月号)

09: 「ゲームと人間」(『atプラス』第32号「人間の未来」、太田出版、2017年05月)

10: 書評:松田行正『デザインってなんだろ?』(『週刊読書人』、2017年05月22日)

11: 書評:ジョシュア・ウルフ・シェンク『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』(矢羽野薫訳、英治出版)(「日本経済新聞」2017年06月17日号)

12: 書評:ルトガー・ブレグマン『隷属なき道』(文藝春秋)(『週刊現代』07月08日号、講談社)

13: 「宇宙全部入り――玄関から銀河帝国の滅亡まで」(池澤夏樹=個人編集日本文学全集『近現代作家集III』月報、河出書房新社、2017/07/12)

14: 「知の巨人、なれないまでも肩に乗ろう」(『本の雑誌』2017年08月号)

15: 書評:レベッカ・ソルニット『ウォークス――歩くことの精神史』(東辻賢治郎訳、左右社)(『週刊読書人』)

16: 「交遊抄」(『日本経済新聞』)

17: 「記憶のデザインのために――来たるべき知識環境の構想」(『デザインの思想、その転回』、エクリ叢書1、2017/12)

18: 書評:松岡正剛『擬』(春秋社)(「日本経済新聞」2017年11月25日号)

19: アンケート:「2017年の収穫」(『週刊読書人』)

20: 「エドガー・アラン・ポオ――言葉のUXデザイナーにして魂のハッカー」(『しししし』創刊号、双子のライオン堂書店、2017年12月31日)

 これもまたいろいろな機会にご依頼をいただいて文章を書きました。全体の傾向としてはゲーム、書評、デザイン、文学にかんするものが中心でした。

 「現代ビジネス」では、ウェブ批評というずっと気になっておりながら、言葉にしたことのなかった方面に挑戦してみました。これは、もっといろいろなサイトについて行いたいなあと念じつつ、続きを書けずに年が終わりました。

 また、『日本文学全集』の月報への寄稿は、本というモノの姿形が好きな人間にとっては、ちょっとたまらない仕事でした。月報とは、全集類に挟み込まれている一枚から数枚でできた紙片です。「宇宙全部入り――玄関から銀河帝国の滅亡まで」というタイトルも、自分では結構気に入っております(自画自賛)。 

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(國分功一郎『中動態の世界』への書き込み)

★I. 選書

・「100人がこの夏おすすめする一冊2017」(青山ブックセンター本店)

・「名著百選」(ブックファースト新宿店)

・ブックフェア「文学とは感情のハッキングである」(MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店)

・ブックフェア「文学とは感情のハッキングである」(青山ブックセンター六本木店)

・ブックフェア「文学とは感情のハッキングである」(ブックファースト新宿店)

 本を選んでリストをつくるのが大好きなので、ブックフェアや選書のご依頼があると、たいそううれしく、締切までああでもないこうでもないと頭のなかで遊んでおります。 

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(MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店でのブックフェアの様子)

★J. 帯文

・ブレイク・J・ハリス『セガ vs. 任天堂──ゲームの未来を変えた覇権戦争』(仲達志訳、早川書房)

 これもはじめての体験でした。短くズバッと言い切る難しさよ!

 

★K. 翻訳

・スコット・ジョセフ「場所のない言葉」第2回「アルファベットの隙間」(『IDEA』第377号、誠文堂新光社、2017年04月)

・スコット・ジョセフ「場所のない言葉」第3回「第二のことが第一に」(『IDEA』第378号、誠文堂新光社、2017年06月)

・スコット・ジョセフ「場所のない言葉」第4回「言葉のサンプリング」(『IDEA』第379号、誠文堂新光社、2017年09月)

 2016年から始まった連載翻訳が完結しました。 

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(スコット・ジョセフさん風に風景写真を)

★L. その他

 以前に比べると量は減らしていますが、やはりこの十何年かやっている起稿(テープ起こし/トランスクリプション)の仕事もお引き受けしました。人の話に誰よりもよく耳を傾けるこの仕事、何度やってもたいへん勉強になります。

 

 というわけで、だからなんだってなものですが、2017年の仕事を振り返ってみました。今年準備を進めており、来年以降に公開される予定の件については「展望篇」で述べたいと思います。 

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『文学問題(F+f)+』の書評

『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)の刊行から1カ月ほどが経ちました。

毎度のことながら、ナウなヤングにバカウケという類の本ではないので、ネット上にコメントが飛び交うということもない代わりに、いくつかのうれしい書評もいただいています。

一つは、Amazon.co.jpでのカスタマーレビューに荒木優太さんによるコメントが投稿されております。同書の意図を的確に評していただいたあとに、次のようにも書いてくださっています。

ところで、著者の山本は、ツールを揃える仕事というか、スタートアップの準備というか、狩りの前に爪を研ぐというか、要するに何かの条件を整えることに毎回集中しているようにみえるのだけど、つまり、この本に沿っていえばf(情緒)をできるだけ抑制しようとしているようにみえるのだけど、これからもその方向でいくのだろうか。いってもいいしそうでなくてもいいのだけれど、器を仕上げる仕事ばかりでたまには中身を盛り付けたいみたいなフラストレーションとか溜まらないのだろうか。山本貴光が栗原康みたいなfのデカ盛りみたいな文章書いたら、それはそれで興味深い……かな?

 これもまたよく観察していただいており恐縮です。このところ「文体」「学術」「文学」といった概念の確認作業をテーマにして、それぞれ『文体の科学』『「百学連環」を読む』『文学問題(F+f)+』という本にしてきたのでした。これは荒木さんが言うように、条件の確認・整理の仕事であります。

情緒(f)を抑制した書き方については、ときどき編集者からもご指摘をいただくので、そう感じる読み手も少なくないのかもしれません。原稿について「もうちょっとご自分を出して」なんて言われたりすることもあります。

どちらかというと、情緒とは、ことさら出そうとしなくても、文章ににじみ出てしまうものだ、と思ったりもするのですが、読者が著者の人となりを楽しみたいような類の文章の場合には、もそっと出すのがよいでしょうね。というので最近『本の雑誌』で連載している「マルジナリアでつかまえて」や、吉川浩満君との連載対談などではそのようにしております。

そういえば、これを書きながら、子どもの頃から感情があまり顔に出ないと言われ続けてきたのを思い出しましたわん。

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(松本大洋『ピンポン』より)

 

また、12月23日(土)の「日本経済新聞」の書評欄に、佐々木敦さんによる書評が掲載されました。

書名からは必ずしも判然としない拙著の内容と構成を丁寧に紹介して、次のように位置づけてくださっています。

「文芸評論」とも「文学研究」とも異なるユニークな立ち位置の本だ。著者の専門の一つでもあるコンピュータのソフトウェア解説書と同様の姿勢と文体で書かれた、使える「文学論」の登場である。

(「日本経済新聞」2017年12月23日)

『文学問題(F+f)+』では、どちらかというと属人的で職人芸的な面をもつ批評(価値づけ)とは別の仕方で、誰であってもこのように文学を捉えてみることができるという理論について書いた点をこのように評していただけたのだと思います。ありがとうございました。

なお、Amazon.co.jpでは品切れ中ですが(2017.12.25 19:20現在)、版元や書店店頭には在庫がございます。

荒木優太さんは『貧しい出版者 政治と文学と紙の屑』(フィルムアート社)を、佐々木敦さんは『新しい小説のために』(講談社)をそれぞれ上梓されたところでありました。

 

文学問題(F+f)+

文学問題(F+f)+

 

 


『WIRED』VOL.30 「21世紀のアイデンティティ・ソングブック」

『WIRED』VOL.30(コンデナスト・ジャパン)の特集は「Identity デジタル時代のダイヴァーシティ」。

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同号に収録のbook in book「21世紀のアイデンティティ・ソングブック」のアンケートに答えました。

 

質問は「あなたのアイデンティティ・ソングは?」

1人1曲を選ぶアンケートで、都合301人分が載っています。

 

編集部から届いたアンケートのメールを読んだ瞬間、脳裏に浮かんだのは、中学生の時分にアルバムを買って以来、愛聴しているあの曲でした。

彼らの歌と音楽にどれだけ助けられてきたことか。

 

 

Googleの医療や健康にかんする検索結果の質を向上するアップデートについて

Googleで、医療や健康にかんする検索結果の質を向上するアップデートがなされたとのこと。歓迎したいニュースです。

ただし、利用者が検索結果の真偽や信頼性について自分でも検討・判断する必要があるという点にかわりのないことには引き続き注意が必要であります。

 

それとはまた別に、Googleによる説明文に含まれる次のくだりも重要です。

現在、毎日数百万件以上の医療や健康に関する日本語のクエリが Google で検索されています。これを分析してみると、医療の専門用語よりも、一般人が日常会話で使うような平易な言葉で情報を探している場合が大半です。日本のウェブには信頼できる医療・健康に関するコンテンツが多数存在していますが、一般ユーザー向けの情報は比較的限られています。

 


もし、あなたが医療関係者で、一般のユーザーに向けたウェブでの情報発信に携わる機会がありましたら、コンテンツを作る際に、ぜひ、このような一般ユーザーの検索クエリや訪問も考慮に入れてください。ページ内に専門用語が多用されていたら、一般ユーザーが検索でページを見つけることは難しくなるでしょう。内容も分かりづらいかもしれません。

(「医療や健康に関連する検索結果の改善について」(Googleウェブマスター向け公式ブログ、2017年12月06日の記事)から)

 

この点について、以前、日本保健物理学会「暮らしの放射線Q&A活動委員会」編『専門家が答える 暮らしの放射線Q&A』(朝日出版社、2013)という本の編集をお手伝いした際、痛感したことがあったのを思い出しました。

同書は、2011年3月11日の震災と原子力発電所の事故のあとで、放射線の健康への影響に疑問をもつ人びとから、広く質問を受けつけて答えるという切実な仕事にとりくんだ同名ウェブサイトをもとに編まれたものです。

そのサイトでは、放射線について必ずしも正確な知識をもたない人びとからの質問を受けて、専門家たちが現時点で科学的に判明している知見にもとづいて回答を書き、公開し続けました。関係者のみなさんの熱意と使命感なくしてはなしえなかった大変な仕事です。

先に述べた本では、それらのQ&Aから精選したものにリライトを施しています。私は同書を企画・編集した赤井茂樹さんを手伝ってそのリライト作業に参加しました。

 

その際に遭遇した課題は次の2点に要約できます。

1) 放射線の影響に不安と疑問を感じている人が読んで、できればその不安と疑問を解消・緩和できること。

 

2) 科学の知見の正確さを損ねずに伝えること。

 

これはもとのウェブサイトでも目指されていたことだと思います。

ただし、この二つの要件を同時に満たすことは簡単ではありません。

2の科学的な知見の正確さを確保しようとすればするほど記述は細かくなり、予備知識・予備理解なくしては読みがたいものになります。

さりとて1を満たすことを優先して適当なことを述べるのでは意味がありません。

 

言い換えると、落ち着いて探究心を持って読む、といった読み方ではなく、不安で心配なので本当のところはどうなのかを知りたいという読み方をする読者が読める形で科学の知見を提供する必要があるわけです。

そして、多くの場合、おそらくは「こうです」と白黒がはっきりした回答が期待されるかもしれないところ、実際にはそう割り切れるものではないという話をしなければならないという難しさもあります。

同書では最終的にどのような文章になったかはご覧いただいてご判断いただくよりありませんが、私自身はこのプロジェクトに関わって以降、この課題について考えさせられ続けています。

 

専門用語とは、たとえるなら複雑な仕組みや概念をぎゅっと圧縮して簡素に省略した表現です。「放射性同位体」や「自然放射」などがその例。

背景も含めた知識をもつ当該領域の専門家にとっては互いのやりとりにも便利な用語です。他方でこれを非専門家に提示する際にはどうしたらよいか。ここにはまだまだ多くの課題や工夫できることがあるように思います。

ひょっとしたら、生活にかかわるさまざまな専門知識について、必要なときに理解を助けてくれるような事典があるとよいのかもしれない、などと想像したりもしています。

あるいは、一つの概念なり用語について、読者の理解の程度に応じて提示される説明文の量と内容が変化するような事典があってもよいでしょう。

てなことを、Googleの発表を読んで考えたのでした。

 

 

定型から生じる不定型

だからなにというわけではないけれど、つい地面にあらわれる模様を見てしまいます。

落ち葉が多い季節はなおのこと。

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ひとつひとつの葉は似たような形をしていて、それだけにパターンがあるのだけれど、こんなふうに重なったりすると、パターンがあるのにないという景色が生まれて、そこに目を惹かれるという気分です。

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『文学問題(F+f)+』ブックフェア・レポート:ブックファースト新宿店篇

『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)刊行記念ブックフェア「文学とは感情のハッキングである」のレポート第3弾は、ブックファースト新宿店です。12月3日にお邪魔して参りました。

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(写真1.入り口)

 

このブックファースト新宿店は、モード学園コクーンタワーというビルに入っているのですが、そのビルの形状にあわせて、たいそうユニークな形をしています。

http://www.book1st.net/shinjuku/floormap/img/floormap_b1.gif

(図はブックファースト新宿店のサイトよりリンク)

先ほどの写真1は、この地図でいうと⑤に近い入り口を撮影したものでした。

私ははじめ、入り口から入って⑤のあたりを右手へ抜けて、赤いゾーンから右端のオレンジのゾーンを目指しました。というのも、オレンジゾーンの②の辺りに文芸コーナーがあるからです。

見てみると、文芸批評関連の棚に『文学問題(F+f)+』もありました。棚から棚へと、ブックフェア台はどこかしらと探し歩くも見つからず、目に入った「100分 de 名著」の『ソラリス』を見つけて手にとり、ついでながらまだ入手していなかった岩波文庫11月の新刊全冊を棚から抜いて、本を抱えてうろうろ。

どうやら文芸棚にはなさそうだと分かり、来た道を戻って今度は赤いゾーンから左端の黄色いゾーンへと移動しました。

ここは人文書や芸術書などのコーナーです。人文書の新刊棚に『文学問題(F+f)+』も置いていただいており、その反対側にありました。

 

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(写真2.ブックフェアコーナー)

写真上部にも拙著が積まれてあるのですが、お客さんが写っていたのでトリミングしております。

上のほうはこんな具合です。

 

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(写真3.リーフレット)

 

この右隣には美術書やデザイン書の棚があり、そこではばるぼらさんによるブックフェアが開催中でした。

ばるぼらさんと野中モモさんによる『日本のZINEについて知ってることすべて――同人誌、ミニコミ、リトルプレス―自主制作出版史1960~2010年代』(誠文堂新光社)の関連ブックフェアでしょうか。これは『アイデア』の連載をもとにつくられた本で、書名の通りこの50年ほどの日本のZINEをこれでもかと載せているものすごい本です。

 

ブックファースト新宿店に訪れるたび、私の脳裏ではウンベルト・エーコの書斎の映像が思い出されます。


迷宮のような書棚の森のなかをさまようような感覚です。場所によってゆるやかなカーヴを描く棚の形もあいまって、だんだんとどこにいるのか分からないような、見当識が失われるような気がするのは、私が方向音痴なこともありますが、先ほどお目にかけたフロアマップの形からもご想像いただけるかもしれません。ここに90万冊ほどの本があるとのことで、ちょっとやそっとでは見切れないわけです。

 

また、フロアのそこかしこに不定形の棚といいますか、円柱状に配置されたおすすめ本があったり、「名著百選」のコーナーがあったりして、歩いていると目にうつる景色が形を変えるようでもあります(私はその感覚が好きです)。

その「名著百選」は12月3日がちょうど最終日のようでした。私は、古賀弘幸さんの『文字と書の消息 ――落書きから漢字までの文化誌』(工作舎)を推薦したのでした。あるかなと思って探してみたら、品切れの札がついておりました。

 

そうそう、2016年の夏に『「百学連環」を読む』(三省堂)を刊行した際には、ブックファースト新宿店で刊行記念イヴェントとして竹中朗さんとの対談を行ったのでした。

ちなみにかつて魔術書を探して読んでいたら、見知らぬ人から「ひょっとして魔方陣とか描きますか」と尋ねられたのは、ブックファースト渋谷店(ビル丸ごと店舗だった折)でした。そういう意味でも忘れがたい書店であります。

いつもお世話になっています。

 

⇒ブックファースト
 http://www.book1st.net