2007

★Francis Xavier: La Ruta de Oriente(AliaVox、2008、ISBN:B000XIJ3OI) 音楽史の書物を読んでいてどうにも歯がゆいのは、録音技術以前の世界の音楽はどうあがいてもそのものを聴くわけにはいかないということだ。 と言ってはみたけれど、大きなCDショップ…

芸術と科学の対話/折衝

★バルテュス+セミール・ゼキ『芸術と脳科学の対話——バルテュスとゼキによる本質的なものの探求』(桑田光平訳、青土社、2007/05、ISBN:4791763394) Balthus + Semir Zeki, Quête de l'essentiel (Les Belles Lettres/Archimbaud, 1995) なんともかみ合わな…

一度くらいは死んで生き返るんだ

ひょっとしたらこれから読もうとしている書物が、これまでにも何度か遭遇した、辛い記憶を自己憐憫で染め上げた〈セカイの中心で怨を叫ぶ〉文章であったらどうしよう、そんな不幸や絶望をきもちよく語る書物であったらどうしよう——長い遺書のようなこの書物…

わずかな首のひねりからはじまる思索

ミシェル・フーコー(Michel Foucault, 1926-1984)の書物の魅力は、めくるめく読書体験をもたらす文章の力とともに、その問いの立て方にあるように思う。ある問いについてめぐらされた思考に触れるとき、第一の関門は読み手がそこで提出されている問いにど…

知りたがるにもほどがある

「人間の精神は、体が触発される変容の観念を通してでなければ、 人間の体そのものを認識しないし、また体が実在することを知らない」 ――スピノザ『エチカ』第2部命題19(佐藤一郎訳) ひとは、自分の身体がなにをなすのかを知らない。というよりもむしろ、…