考える人


『考える人』というタイトルにいささか恥ずかしさを感じるのはなぜだろうと思いつつ、その理由がわからないながらも、書店でこの雑誌の最新号にいきあうたびに禁じえないこの小さな恥ずかしさにとまどう。というのは、雑誌のタイトルそのもののせいというよりは、それに触発される自分のありようにとまどうといったほうがよいかもしれない。


『考える人』は、はじめからそうであったけれど、なにやらわけがわからない雑誌である。なにかを特集していればそれでいいというものでもないが、この雑誌には「場」としての機能が希薄というか、それを志向していないというか、簡単に言えば寄せ書きのような風情を感じるのだ。といってもこれは文句というよりは、そういうもののようだ、という感慨に過ぎない。


雑誌を買い始めたら意味もなく続けて買う習慣を持っているつもりだったのだが、どういうわけかこの雑誌は創刊号は手にしたものの、その後途中見送ったり手にいれたりを繰り返している。今回は、これまたいささか気恥ずかしさを禁じえない「大人のための読書案内」という特集に気後れのようなものを感じながら手にいれた。単純に、水村美苗氏が自宅の書斎で本を広げている一葉の写真(に写っている書棚)をつくづく眺めたいと思ったのだった。書棚に並ぶ書物の背をつくづくと眺める愉悦。