★『マルホランド・ドライブ』(Mulholland Drive、2000、アメリカ+フランス、ヴィスタサイズ、146分)


監督=デヴィッド・リンチ/製作・編集=メアリー・スウィニー/製作総指揮=ピエール・エデルマン/美術=ジャック・フィスク/撮影=ピーター・デミング/音楽=アンジェロ・バダラメンティ/出演=ローラ・エレナ・ハリングナオミ・ワッツ+ジャスティン・セロウ+ロバート・ワッツ+アン・ミラー


最初から最後までどの画面にもつねになにかが起こりそうな不穏さが潜んでいる(たとえば人の顔がただじっと映っているだけでそこはかとなく不安になる)。というのはリンチのどの映画にもいえることですが。統一のとれた話の筋とは程遠いにもかかわらず画面の肌理、物音、人物の一挙手一投足に眼を奪われっぱなしになる。というのもリンチのどの映画にもいえることですが。『ブルー・ベルベット』の折り目正しく対称的なはじまりとおわりかた、『ロスト・ハイウェイ』の奇矯なしかし滑らかな円環構造、たくさんの種がばらまかれつつもそれらが一挙に無意味になりそうな本作の結末。


細部がわかればわかるほど全体がわからなくなる、余剰に満ち満ちた作品。じゃあそれがつまらないのかといえば圧倒的に(ついでに言えば繰り返し観ても)おもしろいのだからまいってしまう。