★山形さんの書評に触れて


山形浩生さんが amazon.co.jp に寄せてくださった書評の中で――★三つありがとうございます。>山形さん――こんな風に書いてくださっている*1

そして最終的には、脳科学を通じた管理社会批判。結局はこれまでのラッダイト科学批判とまったく同じ。気持ちのいいほうに、楽なほうに、と脳のめいじるままに動くと、生々しい生命とのふれあいを失うからみんなもんと苦労したり痛い思いをしよう、とかいうヨタ話。

amazon.co.jpより抜粋


そう読んでしまいたい気持ちは想像できるのだけれど、書き手としても上記のようなことは書きたくないと念じていた点で、皮肉なコメントを頂戴する形になりました。


終章で持続の話をしたのは、「(持続を記述しない)科学いくない!→(持続に目をむける)哲学いい!」という話ではなく――「みんなもっと苦労しよう」という話では(さすがに)なくて――そもそも「心がわかる」という場合の「心」の内実が、科学が記述しようとしていることと非科学者が想像するものとではちがっているから、科学に期待していいこと/期待できないことをわきまえたうえで、持続である心について考えなくては、ということなのでした。


科学を非難したり価値を貶めたりする意図(科学に対する価値判断をしようという意図)はありませんで、脳科学がどういう条件のもとで対象を記述しているのか、という次第を検討(批判)したわけです。


だから本文を閉じる前に、科学・芸術・哲学――他の学/方法にまで手がまわらなくて失敬――の三つをたずさえて、とも書いたのだし、「持続なき科学的な記述か科学的な記述なき持続かといった二者択一が問題なのではありません」(p.304)とも書いたのでした。

*1:追記:拙著『心脳問題』への書評において