熊は安閑としているか?



井伏鱒二「なだれ」(『井伏鱒二全詩集』、岩波文庫緑77-4、岩波文庫、2004/07、amazon.co.jp

峯の雪が裂け
雪がなだれる
そのなだれに
熊が乗つてゐる
あぐらをかき
安閑と
莨をすふやうな恰好で
そこに一ぴき熊がゐる


『厄除け詩集』の巻頭におかれた
ユーモラスでどこかものがなしくもある一篇の詩。


どうしてそこに熊がいるのか、
可笑しくって何度も読んでしまう。


とめることのできないなだれの上で
熊はなにを考えているのか。


気づいたらなだれの上にのっている。
これは誰のことか。


この岩波文庫には、鱒二が残した全70篇の詩が集成されています。