高橋洋『映画の魔』青土社、2004/09、amazon.co.jp


現場の作家はそのつど手持ちの道具から武器をつくりあげ、それを使ってせいいっぱいに戦う。武器をつくるためにつくるのではないし観賞用につくるのではないから、細かいところまで行き届いていたりする必要はないし、多少ひずんでいてもかまわない。問題はその武器をつかってねらう獲物にどこまで迫れるか、なのだから。そんな器用仕事のようにして、折々の機会につづられた文章の集成は読みごたえがある。


筆者がいう「映画の魔」とはなにか? 実はこれがわかるようでいてわからない(もっともそんなにすんなりとわかるンなら、それこそ誰も苦労しないわけだけれど)。映画のなかにその「映像が現れた瞬間、そこで切り開かれたある異常な感覚領域に介在する」なにか。「映画を作る人間が本能的に考えまいとする、何か触れてはならないものにかかわる感触」。それが「魔」と呼ばれるだけに、はっきりとはわからないのだが、この「映画の魔」を召喚することにとりつかれた筆者の「悪戦苦闘、七転八倒の記録」たる本書は、なんとかその魔に触れようとして書かれたおりおりの文章を集めた一冊。