赤木昭夫『見える! アメリカ ワシントンDC・ガイドブック』岩波書店、2004/10、amazon.co.jp


本書は内容の点からいうと――大統領選挙戦(11月02日)を目前にした――アメリカの政治の中枢ワシントンDCについて、より深く知るための情報と分析を予備知識がない読者にもわかるように提供した労作です。目次はつぎのとおり。

一 権力の中心は無!


二 演出された公園都市 選挙権のない市民たち
  お勧め観光コース
  連邦のための公園都市
  三権分立の都市計画
  選挙権のないワシントン市民たち


三 Kストリートに沿って 議会を動かすロビイスト
  メトロの乗客
  世界一の弁護士密度
  ふりだしは議員スタッフ
  ロビイストがマネーを流す
  圧力団体を動員する
  ビジネスランチ
  薬代をめぐる政争
  産業と化したロビー活動


四 グリーンベルトの蔭に 隠された巨大政府
  小さな政府か 大きな政府か
  IRS――はびこる節税と脱税
  NIH――科学と企業と政治
  CIA――想像力が欠けた脳
  定員超過の刑務所


五 Uストリートのブルース なぜ貧富の差があるのか
  ワーキング・プアー
  医療保険のない人たち
  なぜホームレスになるのか
  ワシントンのためにパンを
  草の根は行動する


六 霞が関でなく霞が沼 世界戦略の策定プロセス
  フォギーボトム
  シンクタンクとワークショップ
  外交を左右するロビイスト
  二つの顔をもつ世界銀行
  アメリカのゆるぎない外交路線


七 「権力の中心は無!」の解釈


マイケル・ムーアの映画やイラク戦争、あるいはこのたびの大統領選挙選の報道などを通じてアメリカの政治に関心を持ったはいいけれど、よりよく知るためには何を読んだらいいかわからない、という読者にうってつけの一冊。


……なのだけれど、このパッケージング(ブックデザイン)のためにどうも誤解されるんじゃないかと心配になります。内容はハード(難解という意味ではなく)なんだけど、パッケージはやっつけ仕事で装幀しちゃった旅行ガイドみたいになっていて、さらに誤解をあおりそうなのが見返しの紹介文。

連邦政府直轄の唯一の特別行政区、ワシントンDC。全米屈指の富裕層が集まり、アメリカ政治の中枢で大きな役割を果たすロビイストや弁護士の事務所が軒を並べる。また、IMF、世界銀行、国務省や各大学がひしめき、世界戦略を発信する。一方で、貧富の差の著しい人々が隣り合わせに暮らし、数々の市民運動の現場ともなってきた。この稀有な政治空間を通して、現在のアメリカ社会の構造が、歴史とその将来とともにつぶさに見えてくる。


と、ここまでは本書の内容を要約した文章でよろしい。のだけれど、つづきはこう。

ありきたりの観光では飽き足らなくなった旅行者にお勧めの徹底案内。


orz


想定読者はどうしても「旅行者」にしたいみたい。でも。