佐々木健一『美学への招待』中公新書1741、中央公論新社、2004/03、amazon.co.jp


美学の入門書。

二〇世紀後半以降、あらゆる文化や文明が激しく急激に変化しているが、藝術の世界も例外ではない。複製がオリジナル以上の影響力を持ち、作品享受も美術館で正対して行うことから逸脱することが当たり前になってきている。本書は、藝術が、いま突きつけられている課題を、私たちが日常抱く素朴な感想や疑問を手がかりに解きほぐし、美と感性について思索することの快楽へといざなう、最新の「美学入門」である。

(同書、見返しより)


一貫して「藝術」(「芸術」ではなく)の文字が使われているのはなんだろうあやしげ。



★ジャン=リュック・ナンシー『肖像の眼差し』岡田温司+長友文史訳、人文書院、2004/11、amazon.co.jp
 Jean-Luc Nancy, Le Regard du portrait (Éditions Galilée, 2000)


ナンシーによる絵画論。肖像画に焦点をあてている。本文73ページ。注+解題+あとがき118ページ。岡田氏による訳者あとがきにこんな言葉を見つけた。

一般に美術史家と称される人(わたしもまだその端くれに名を連ねているとして)は、この種の本を、抽象的で、「実証的」な裏づけに欠けるとして、敬遠する傾向にある。だが、哲学や美学、現代思想は言うまでもなく、とりわけ美術史に関心のある若い世代の人こそ、こうした議論から目をそむけないでほしい、とわたしは願ってやまない。理論的な思考との対決が、歴史研究にとっていかに有益かは、いまさらとりたてて言うまでもないことなのだから。

(同書、p.190)


と言わずにはおれないような状況が美術史業界にはあるのだろうか。そういえば、いま日本で美術史家というとどんな人がいるだろう。