工藤幸雄『ぼくの翻訳人生』中公新書1778、中央公論新社、2004/12、amazon.co.jp


ポーランド文学(ほか)の翻訳家・工藤幸雄氏(くどう・ゆきお、1925- )による翻訳人生回顧録。工藤氏がどのようにして翻訳の道へはまりこんだか、そしてどのような書物を翻訳してきたか。翻訳家による文章には、他言語間の視差に通暁しているひとのものの見方が反映されていて、それだけでおもしろいものが多いように思うけれど、本書も例外ではない。翻訳については(ってここだけ抽出するのはいかにも野暮なのだが)、外国語を習得したいならまずもって日本語に習熟・上達せよ、しかし日本語のすべてに通じるためには人生はあまりにも短い(ましてや外国語を習得するとなればなおのこと。それでもやるなら二、三言語にして精一杯やりんさい)、という至極まっとうなご意見。工藤氏の仕事は、男性版、女性版の2ヴァージョンあるミロラド・パヴィッチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語り』東京創元社、1993)、ブルーノ・シュルツ全集』(新潮社、1998)、アダム・ミツキエヴィチ『パン・タデウシュ』講談社文芸文庫、1999)ほか多数。