出先で携帯していた本を読み終えてしまい(って繰り返し読めばいいのですが)、手持ち無沙汰だというので本を補充すべく書店にはいる昼下がり。



ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル1――ガルガンチュア』(宮下士朗訳、ちくま文庫ら5-1、筑摩書房、amazon.co.jp)#0035
 François Rabelais, Gargantua


ちくま文庫のために企画されたフランソワ・ラブレー(François Rabelais, 1483?-1553)の奇書『ガルガンチュア』『パンタグリュエル』の新訳版。訳者の宮下氏の「解説」によると、今回の文庫版では『ガルガンチュア』『パンタグリュエル』『第三の書』『第四の書』を翻訳刊行する予定である由。『第五の書』のような未完成版や周辺のテクストは「付録とか別巻といった、別のかたちで紹介したいと考えている」とのこと。



同書には、先行する翻訳書として、渡辺一夫訳があります。現在は岩波文庫に五分冊で収録されています(ワイド版もある)。渡辺一夫による七五調や漢詩調などさまざまな文体をとりいれた名調子の翻訳もたいへんに愉快なものでしたが、この宮下訳もまた独得の軽妙さを発揮した訳文で愉しめます(たぶん、漢字の含有率が渡辺訳よりも少なくなっている)。この新訳の出現によってこれからはじめてラブレーを読む読者には、宮下訳で通読してから渡辺訳や原文に向かうという道もできますね。


原典は、Livre de Poche版(右書影)などが仏語書を置いている洋書店などで比較的入手しやすいと思います。


ラブレーについては、そのうち簡単な関連書誌をつくりたいと思います(ってこんなのばっかり)。



稲垣足穂稲垣足穂1―― 一千一秒物語ちくま文庫い53-1、筑摩書房、amazon.co.jp)#0036


筑摩書房から稲垣足穂全集』(全13巻、2000-2001)が完結したのも記憶にあたらしいところですが、今月からちくま文庫稲垣足穂コレクション」と題したコレクションの刊行がはじまりました。稲垣足穂(いながき・たるほ, 1900-1977)の仕事を全8巻で概観する企画。


全巻構成をぱっと見たところでは、以前河出文庫から出ていた稲垣足穂コレクション」と似たセレクションのようです。が、好評になったら泉鏡花集成』ちくま文庫版)や内田百輭集成』(同文庫版)のときのように、続巻を刊行してくれるかもしれないのでみなさんお読みください。どうでもいいことですが、本書の見返しに印刷された著者の写真が若いころのもので、晩年の海坊主みたような相貌の印象が強かったこともあり軽いショックを受けました。ぬはー。


筑摩書房は、ポール・ヴァレリー全集』を文庫化してくれないかしら、と念じていたのですが、来月の平凡社ライブラリー新刊の書目に『ヴァレリー・セレクション1』(東宏治+松田浩則編訳)の書名があがっていました。どのような規模・内容になるのかたのしみです。ヴァレリーといえば小生は未読ですが、『未完のヴァレリー――草稿と解説』(田上竜也+森本淳生編訳、平凡社、2004/12、amazon.co.jp)が刊行されています。



★渡辺哲夫『二〇世紀精神病理学史――病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面』ちくま学芸文庫ワ8-3、筑摩書房、amazon.co.jp)#0037


精神病理学を失敗した学問と評し、その内実を検討した『二十世紀精神病理学史序説』(西田書店、2001)に大幅な改稿をほどこした一冊。

本書の意図は、二〇世紀的狂気とそれを追尋してきた二〇世紀的精神病理学が、ともども、それに依拠せざるをえない〈力としての歴史〉の運命あるいは、その盛衰の様相を問うことにある。換言するならば、〈自然生命直接的事態〉が人間によっていかに処理されてきたか、いかなる処理の不手際が生じたか、その不手際によって、二〇世紀精神病理学が何を獲得し何を失ったか、を問うことに存する。

(同書、p.18)


★クロード・ダルヴィ他シモーヌ・ヴェイユ――その劇的生涯』稲葉延子編訳、春秋社、1991/06、amazon.co.jp)#0038


フランスの演劇人クロード・ダルヴィ(Claude Darvy, 1942- )による芝居シモーヌ・ヴェーユ――その劇的生涯」(Simone Weil 1909-1943)(1983)の全訳に、シモーヌの兄アンドレ・ヴェーユへのインタヴュー、吉本隆明へのインタヴュー、同時代評(アラン、ペラン神父、ティボン、ボーヴォワールトロツキー、ヴァレリー、カミュ、グルニエ、バタイユ、エリオット、マルセル、モーリヤック、ブランショソンタグらによるヴェーユに関するテクスト)を編集した一冊。


Jean-Luc Godard, A bout de souffle白水社、1991/03)#0039


ゴダール勝手にしやがれ』(A bout de souffle)(1960)の仏語シナリオ再録本。見開き左ページにシナリオ、右ページに読解のためのヒントを掲載した仏語学習者向けのつくり。


『明治文學全集79――明治藝術・文學論集』(筑摩書房、1975/02)#0040


『明治文學全集80――明治哲學思想集』(筑摩書房、1974/06)#0041


明治文学全集(全99巻+索引巻)。上記各巻の収録作品はどれも興味深いものばかり。そのうち目次構成をここに記録しようと思う。