内田樹『先生はえらい』ちくまプリマー新書002、筑摩書房、2005/01、amazon.co.jp)#0158


「先生は偉い存在なのだから尊敬しなさい」という話ではない。


師弟の関係とは、知識の授受といった商取引のような関係ではなく、「師は私(弟子)が知らないことを知っているはずだ」という想定(誤解)に基づいて、弟子が師からなにかを学んでしまうような関係なのだ、という条理を教えてくれる本。


とはいえ、本書の教えを How to 的に受け取って偉大な師との出会いを果たそうと考えたり、偉大な師となることを目論んだりすることはできない。というのも、内田さんも書いているように、自分にとってよき師との出会いとは、恋愛におけるひととの出会いに似て、自分がなにか主体的な選択を行なうことによって果たされるわけではないからだ。


前著『他者と死者 ラカンによるレヴィナス(海鳥社、2004/10、amazon.co.jp)で述べられた師弟論を、活字を読む意志のある子供も対象読者にいれるという条件で敷衍しなおしたものなので、未読の方はひきつづき同書に進まれるとよりいっそうの教えを得ることができる。


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