ル・クレジオ『歌の祭り』管啓次郎訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【文学】



★クリスティーン・コースガード『義務とアイデンティティ倫理学——規範性の源泉』(寺田俊郎+三谷尚澄+後藤正英+竹山重光訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【思想】

人はなぜ,正しいことをしなくてはならないと思うのか.この根源的な問いに,当代一級の倫理学者が現代のアイデンティティ論をふまえた新しい理論を提案する.コーエン,ゴイス,ネーゲル,ウィリアムズら英米の著名な学者たちによる論評と,それへの応答.スリリングな議論の応酬を追うなかで倫理学の基本問題が学べる1冊.



★ゲアリー・マーカス『心を生みだす遺伝子』(大隈典子訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【科学】

「心の発達には遺伝子と経験のどちらが重要か」という問いは,そもそもの前提が間違っていた.遺伝子の役目は生まれたときに終わるわけではなく,人が生涯にわたって経験から学ぶことができるのもまた遺伝子のおかげなのだ.遺伝子が実際にどう働くかをつぶさに見ることで,「生まれと育ち」の真の関係が鮮明に浮かび上がる.



★水谷雅彦編『岩波応用倫理学講義 3 情報』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【思想】

情報化社会の神話と現実――何を考えておくべきか,パソコンと携帯のディスプレイに日々立ち上がる,未知の情報環境を生きるために.法と規範のありうべき形とは,医療ミスや犯罪などの負の現象が語るものとは.サイバースペース現象学から対話の倫理学まで,複数のアプローチで新しい公共性を探る,情報倫理必携.



品田冬樹『ずっと怪獣が好きだった——造形師が語るゴジラの50年』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【映画】

誕生から50年.これまでにゴジラ映画は27本制作されたが,そもそも怪獣とは何か.なぜそれほど人気を博したのか.怪獣少年が高じて特撮・怪獣映画の造型作家となった著者が,怪獣の下顎の変遷,怪獣どうしの格闘はどう作るかなど,造型製作・撮影にまつわるエピソードを交えながら,怪獣を愛好する日本人の心性を語る.


⇒作品メモランダム > 2005/03/24
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050324#p2



★デイヴィッド・ミラー『1冊でわかる 政治哲学』(山岡龍一+森達也訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【思想】

現代政治理論の中心的な領域を幅広く研究してきた著者が,その成果を極めて簡潔にまとめた恰好の1冊.政治哲学の基本的な問題だけでなく,最先端の問題を扱いながらも,つねに日常的な経験を出発点として組み上げられた議論は,政治に関する理論的,哲学的反省をかいまみたいと思う読者にとって最良の導きになるであろう.



★日本西洋古典学会編『西洋古典研究 LIII』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【思想】

2004年度の西洋古典学研究の成果である,C.オースティンの特別寄稿「ブラックホールと幻覚」,丹羽隆子「「オデュッセウスの舟」と,艤装品hypozomataについて」,田中咲子「「アキレウスの画家」の白地レキュトスにおける死者と生者」等の10論文と,国内外文献書評,古典学関係文献目録,海外主要雑誌目録などを収録する.(アルファベット部分には実際はギリシャ文字が入る)



佐々木正人ダーウィン的方法——運動からアフォーダンスへ』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【心理学】【生態心理学】

態心理学のわが国における第一人者がその問題意識を平易に語る論集.既存の運動観を覆したアフォーダンス理論をさらに深める視点を整理する.その源流にあるダーウィン的方法とは.たゆまぬ流れの中にある行為からミミズの知性を浮かび上がらせたダーウィンにならい,環境と行為との相互作用に「意図」の本質を見抜く.



広島大学総合科学部101冊の本プロジェクト編『大学新入生に薦める101冊の本』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【教養】【ブックガイド】

21世紀を生きる上で重要となる「文理横断型」の知を強調するユニークな読書案内.大学における「教養的教育」の水準とアウトラインを示し,学生が自主的に学習する際のガイドブックとして役に立つ.「時代を超える基本教養」「人間の記録」「越境する知」「現代の重要問題」の四分野に分けて紹介.人名・事項索引付き.


今月は、東大出版会からも新入生向けのブックガイドが刊行されています。本書をちょっとのぞいてみたけど、オーソドックスな内容でした。



★奥平康弘『「萬世一系」の研究——「皇室典範的なるもの」への視座』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【法学】【天皇制】

憲法学研究の第一人者が,日本国憲法下の天皇制のもつ諸問題を解明すべく,戦後および明治の皇室典範を俎上に乗せ,制度としての天皇制の形成過程とその基本的性格を歴史的に検証する.昨今の表層的な「女性天皇」容認論や「皇室の民主化」論において見落とされがちな,天皇制そのものの本質的な矛盾を徹底的に問い直す.



★ロバート・J.C.ヤング『1冊でわかる ポストコロニアリズム(本橋哲也訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【思想】

アフガニスタンパレスチナアルジェリア,インド……著者は読者とともにポスト植民地のさまざまな「情景」をたどりながらポストコロニアリズムが問いかけるものを浮かび上がらせる.ポストコロニアリズムとは何よりも具体的な政治・社会・文化の状況を出発点にふまえた,下からの視点による理論であり実践なのだ.第一人者による待望の入門書.


訳者の本橋哲也氏の近著も『ポストコロニアリズム岩波新書新赤928、2005/01)でした。


⇒作品メモランダム > 2005/01/25
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050125#p1



★二宮宏之『マルク・ブロックを読む』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【歴史】

「私たちは,不当な運命の暫定的な敗北者なのです」.『王の奇跡』『封建社会』等を著し,L.フェーヴルとともに『アナール』誌を創刊,現代歴史学の革新に大きく寄与したブロック.彼は,ユダヤ系の出自をもつ一市民として,激動の近代を真摯に生きぬき,ナチスの銃弾に斃れた.その軌跡を「生きられた歴史」として読み解く.待望の書き下ろし評伝.



『岩波世界の美術 レンブラント(高橋達史訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【美術】

団体肖像画の大作《夜警》をはじめ,家族や友人の親密な肖像画,風俗画,聖書や古典古代に取材した物語画,さらにはおびただしい数の自画像など,いずれも深い人間洞察にもとづくレンブラント芸術を,最新の研究を踏まえ,17世紀オランダの社会のなかに位置づけ,そのつきせぬ魅力を浮き彫りにする.


レンブラントといえば、貴田庄レンブラントと和紙』(八坂書房、2005/02、amazon.co.jp)が先月刊行されました。未読ですが、こちらもおもしろそうな内容です。

17世紀オランダ絵画の巨匠レンブラントが、江戸時代の日本からはるばる運ばれた和紙に銅版画を刷っていた! このエキサイティングな事実を、作品と史資料の分析により初めて徹底検証。レンブラントの手に渡った和紙とはどのようなものだったのか? 彼はなぜ数多くの和紙を使用したのか? ──画家の〈日本趣味〉を解き明かすスリリングな美術史。


⇒八坂書房 > 貴田庄『レンブラントと和紙』
 http://www.yasakashobo.co.jp/books/detail.php?recordID=457



『新版 西田幾多郎全集 第11巻 小篇 追憶・弔辞 序跋 推薦文 初期文章 未定稿 詩歌』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【哲学】

近代日本哲学の生起点であり,同時に今日の哲学の問いと可能性に多くの示唆を与え続ける「思索の人」西田幾多郎.その全貌を開示する,新編集による半世紀ぶりの新版全集.綿密な本文校訂を施し,詳細な校異表,注解,索引を付した.


新しい西田全集の最新刊。古い版は古書店で全巻2000円前後で入手できます。



プラトン全集3 ソピステス ポリティコス』(藤沢令夫+水野有庸訳、岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【哲学】

「分割」の方法を駆使した重要著作2篇.『ソピステス』で築かれる存在論と認識論の堅固な基礎に立つプラトンは,続篇である『ポリティコス』において,真の政治思想,真の政治家がその基礎の上にしかありえないことを力強く描き出す.『国家』から『法律』に至る円熟期のプラトンが到達しつつあった思想の真髄がここに示される.


岩波書店何度目かのプラトン全集(再刊)。プラトンについては、下記に全集の書誌をまとめました。


⇒哲学の劇場 > 作家の肖像 > プラトン
 http://www.logico-philosophicus.net/profile/Plato.htm



原武史+吉田裕編『岩波 天皇・皇室辞典』岩波書店、2005/03、amazon.co.jp)【辞典】【天皇制】

最新の研究成果をもとに,必要な知識を網羅.近代以降に重点を置いて,徹底的に解説.「古事記日本書紀」から「現天皇」「現皇后」まで,通史的に項目を排列し,天皇制の深層に迫る.「皇室外交」「女帝論」などの項目で,転換期の皇室を浮き彫りにする.全113項目の〈読む〉辞典.