小林伸一郎写真展——ビルディング ザ シャネル ルミエール タワー」


2004年12月、銀座三丁目にオープンしたシャネル銀座ビルディング(設計=ピーター・マリノ)の旧ビル解体から新ビル建築の過程を、廃墟の写真家・小林伸一郎(こばやし・しんいちろう, 1956- )が撮影。その写真を大型カラープリントで展示した写真展。主催はシャネル株式会社。


解体過程も建築過程も、写真からは作業者の姿が一切排除されている。建築過程の写真には、むき出しの通気ダクト群や、鉄骨、ケーブル類がとらえられており、これが非常に空虚で無機質な、それこそ廃墟めいた空間を演出している。かえって解体過程の写真のほうが表情がゆたかでおもしろいのだが、こちらは出品点数が少なかった。


解体/建築過程を示す写真は、その大部分においては、それがどこの国のどこのビルであってもわからない匿名的な物塊を写している。これが完成間近の段階にいたって、あのロゴ(記号)がとりつけられるだけで、にわかにシャネルのビルらしくなるのだから呆れてしまう。いまさら言うのも莫迦ばかしいことではあるけれど、記号の威力をまざまざと見せ付けられたような気がした。「ええ、わたくしどもはこのようにして当社のブランド・イメージを今日にいたるまで創り続けてきたのでございます(がなにか?)」


シャネルという記号に熱狂することと、アニメやゲームのキャラに萌えることとのあいだには、どんな違いがあるだろうか、とつい先日この東京都写真美術館で観た、建築展「おたく:人格=空間=都市」のことを思い出した。


入場料に値する写真展か? と問われれば個人的には「否」だけれど、上記のようなことを考えさせられた。会期は、2005年04月17日(日)まで。03月26日(土)には作家によるギャラリー・トークが予定されている。


東京都写真美術館
 http://www.syabi.com/


CHANEL(各国語)
 http://www.chanel.com/


⇒作品メモランダム > 2005/03/10 > 「おたく:人格=空間=都市」
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050310#p1