新宮一成立木康介フロイトラカン講談社選書メチエ330、講談社、2005/05、amazon.co.jp)#0396


講談社選書メチエのサブシリーズ「知の教科書」最新刊は、フロイトラカンの名を冠している。


言語活動を介することで人間はどのように現実を経験する/経験しないことになったのか。フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939)が臨床経験とスペキュレーションからつくりだしたさまざまな仮説は要してしまえばこのことを探究する試みだった。後にラカン(Jacques Lacan, 1901-1981)はソシュールの構造言語学を梃子にしてフロイトの探究を読み直す(同時にフロイトによってソシュールを読む)仕事に着手する。


本書は従来の「知の教科書」同様、四部構成で上記の結構を解説する。

・第一部 ラカンからフロイトへと遡ること


・第二部 フロイトラカンのキーワード
 ・1 社会にとって私はどんな価値があるか
 ・2 人は歴史に従わねばならないか?
 ・3 人はなぜ性にたぶらかされるのか


・第三部 三次元で読むフロイトラカン
 ・1 日本文化とフロイトラカン
 ・2 仏教とフロイトラカン
 ・3 メディアとフロイトラカン
 ・4 歴史論争とフロイトラカン
 ・5 貨幣論フロイトラカン
 ・6 芸術論とフロイトラカン
 ・7 催眠、臨床心理、そしてフロイトラカン


・第四部 知の道具箱——フロイトラカンを読むために
 ・1 『エクリ』の主要論文とフロイトへの参照
 ・2 『セミネール』既刊行巻とフロイトへの参照
 ・3 ミレールとジジェク、そして日本語で読めるフロイトラカンの研究書


・あとがき
・執筆者紹介
・索引



編者の一人・新宮一成(しんぐう・かずしげ, 1950- )氏のラカン精神分析講談社現代新書講談社、1995/11、amazon.co.jp)と共にラカンフロイトへ接近するための優れた入門書であると思う。

私たちのこの本によってラカンに出会った読者は、次には何よりも『エクリ』を手にとってほしい。もう入門書などを読む必要はない。『エクリ』を読むこと。ろくに目も通さずに、途中で投げ出したり、批判がましい文句を投げつけたりする人の声には耳を貸さず、この分厚い著作のめくるめくような言語の渦に飛び込んでみること。

(同書、213ページ)


Écritsは現在ペーパーバック二分冊で入手できる。


また、目下刊行中の『セミネール』は今年の三月にフランスで最新刊第23巻 Le sinthome が刊行されている。邦訳では、第5巻「無意識の形成物(上)」が、5月26日に岩波書店から刊行の予定。