もう一冊、みすず書房の新刊より。こちらは映画書。



★田中眞澄小津安二郎と戦争』みすず書房、2005/07、amazon.co.jp

1937年9月―1939年7月、一下士官として中国大陸で従軍。1943年6月には軍報道部映画班としてシンガポールに赴任、終戦の日を同地で迎える。これは小津安二郎が戦争と直接関わりをもった時間の総量だが、いわゆる「支那事変」時の「従軍日記」が生涯の日記のなかでもっとも緻密で濃密な記述に満ちていることは、ご存じの方も多いだろう(「戦地からの手紙」とともに小社刊『小津安二郎東京物語」ほか』に収録)。「しかし、彼はじつは日記のほかにもう一冊のノートを残していた」。本書第II部で全文公開の「陣中日誌」である。


山中貞雄の遺文に触発されて書き綴られた戦場スナップ「撮影に就ての《ノオト》」、火野葦平『土と兵隊』を批判した読書ノート、対日本兵工作員用のパンフレットをまるごと筆写した「対敵士兵宣伝標語集」ほか、「戦争という人間の頽廃の危機」のただなかで、非人称のカメラさながらすべてを記録にとどめようとする強靭な意志に貫かれている。しかも「従軍日記」とは「重ならない内容のほうが多い。日記と相補う形で、戦場の小津安二郎軍曹の見聞と思考を記録し、体験を伝える貴重な資料」なのである。


戦場とは何か。軍隊とは何か。小津安二郎の「戦争体験」とは何だったのか。新資料を発掘・提示しながら解き明かされる人間ドキュメント。

みすず書房ウェブサイト紹介文より)


みすず書房 > 田中眞澄『小津安二郎と戦争』
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