読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる



★ジェイムズ・ストレイチーフロイト全著作解説』北山修監訳、人文書院、2005/08、amazon.co.jp


本書は、イギリスの精神分析ジェイムズ・ストレイチー(James Strachey, 1887-1967)が編集した「標準版フロイト全集(The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud)」(全23巻)の各巻につけられたストレイチーによる著作解説を年代順に並べ、各論文の邦訳情報を一冊にまとめた書物である。


現在、ヴィンテージ(Vintage)からペーパーバック版が刊行されているこの英語版全集は、ストレイチーがフロイトの娘アンナ・フロイト(Anna Freud, 1895-1982)の協力を得て編纂した全集で、"The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud"という叢書名からもうかがえるように、ジクムント・フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939)による心理学関連の研究を集成したもの。本書の邦題はフロイト全著作解説』となっているが、いま述べたようにストレイチーによる全集は「心理学研究」と限定されており、全仕事の網羅が目指されているわけではないことには念のため注意しておきたい。ストレイチーは同全集への序文で次のように述べている。


私の目的は、出版されているフロイトの心理学論文の全部をここに収録することであった——それはすなわち、精神分析のものと精神分析よりも前のものとの両方を収録することである。彼の執筆活動の最初の15年の間に、身体科学に関して数多くの出版物をフロイトは発表しているが、それらはここにはおさめられていない。

(同書、25ページ)


また、フロイトの膨大な書簡の大半も除外されている。もちろん以上は、書名からありうる誤解に対する一般的な注意に過ぎず、本編訳書がたいへん便利であることにかわりはない。


本書は、フロイトの著作を年代順に並べ、各テキストについて次のような項目を記述している。

・邦訳タイトル
・刊行年
・ドイツ語タイトル
・英訳タイトル
・(a)独語版書誌
・(b)英語版書誌
・(c)〔邦訳版書誌〕
・〔解説〕



ただし場合によって、(a)と(b)は入れ替わっていたり(刊行の順序などによる)、稀に(a)が独語ではなく仏語のこともある。邦語書誌には、単行本などの邦訳はもちろんのこと、人文書院フロイト著作集』日本教文社『フロイド選集』ほかの収録巻数とページ数も記されており、独英日を比較して読みたいおりなどはそれぞれどの巻をもってこればよいか一目瞭然である(って当たり前なのですが)。


また巻末にはストレイチーが作成した「テーマ別著作一覧」と「著作索引」(英語・独語・諸国語)がついている。ちなみにカヴァーを外すと、人文書院フロイト著作集』と同じ装幀が施されている。


この労作の便利さは、いまさら私が言うまでもないことだが、当たり前のリファレンスとしての用法のほかに、これからフロイトの著作に分け入ってゆこうと考えている読者にとって格好のガイドブックとなることも記しておきたい。



(私事にわたって恐縮だが)本書を通覧していると、かつて大学の講義で小此木啓吾(おこのぎ・けいご, 1930-2003)が講義で口をすっぱくして「ドイツ語を読めとはいわない、英語版でとも言わない。せめて日本語版でよいからフロイトが書いたものを読んで下さい」と、普段は静かに講義する彼にしてはめずらしくそのときだけは語気強く学生に説いていたことが思い出される。そう、たとえ眉に唾するにしても、まずは読むことだ(話はなんにせよそれからだ)。当時、新潮文庫岩波文庫に収録されている作品くらいしかフロイトの作品を読んだことのなかった私は、小此木の言葉に促されて手探りで著作集やその元となった書物に向かった。もしその頃、本書があったらさぞかし心強かったに違いない、と思う。



本書の監訳者をつとめた北山修(きたやま・おさむ, 1946- )氏には、ウィニコットの邦訳をはじめとする著作が多数ある。最新著は、講談社選書メチエ2005年10月の新刊『共視論——母子像の心理学』講談社選書メチエ344、講談社、2005/10、amazon.co.jp)。また、ミュージシャン/精神科医としての歩みをたどる『ふりかえったら風1——対談1968-2005 きたやまおさむの巻』みすず書房、11月予定、ISBN=4622071711)の刊行が予定されており、ザ・フォーク・クルセダーズに関心のある読者にとってもたのしみな一冊だ。


人文書院 > 『フロイト全著作解説』
 http://www.jimbunshoin.co.jp/mybooks/ISBN4-409-33048-9.htm


⇒ Sho's Bar > 標準版フロイト全集をめぐって
 http://shosbar.com/works/crit.essays/hyoujunban.html
 鈴木晶氏のウェブサイトにあるテキスト


Wikipedia > ザ・フォーク・クルセダーズ
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BA


フロイト郵便
 http://homepage3.nifty.com/freud/
 『フロイト著作集』補完計画