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数学は美しいか

work magazine 考える人 新潮社



『考える人』No.45、2013年夏号(新潮社、ISBN:B00DHKRK08)の特集「数学は美しいか」で、以下の原稿などを担当させていただきました。

・「数学の愉悦を味わうために」(イントロダクション)
円城塔「天才数学者は、変人とはかぎらない」(インタヴュー)
伊東俊太郎「人は数学に何を求めてきたか」(インタヴュー)
・三宅陽一郎「人工知能は数学を理解できるのか」(インタヴュー)
・「発見と難問の森に遊ぶ」(ブックガイド)
・テレンス・タオ「素数の研究――その構造とランダム性について」(翻訳)


特集のイントロダクションでは、無理を承知で「現代数学マップ」なる図をこしらえて、数学の諸領域を大きく捉えるための手がかりになればというつもりで原稿を書いております。この図は、いくつかの数学辞典や数学書から抽出した領域を並べてみたものです。時間の要素や個別の数学者や文献などは一切描きこんでありませんが、ゆくゆくは「新たなる百学連環」(学術史の全体像を示す図)の一部として、時間などの諸要素を盛り込んだ精密なマップを描きたいと念じております。


今回の特集は、以前の「日本の科学者100人100冊」の時と同様に、企画の段階から編集部の疇津真砂子さんや高野夏奈さんたちとお話しをさせていただくという形を採りました。そこで話し合うなかで、インタヴューさせていただく候補としてお名前が上がったのが、円上塔さん、伊東俊太郎さん、三宅陽一郎さんでした。


円城さんには、自らが数学者として活躍するだけでなく、数学者のコミュニティをつくったヒルベルトとコルモゴロフを中心に、数学者という人たちが何をしているのかということを伺いました。誌面には載せきれませんでしたが、さまざまな数学者たちについてその勘所やエピソードの数々を語る円城さんの、それは楽しそうなご様子に触れて(笑いの絶えないインタヴューでもありました)、どこかで円城さんに数学者列伝風の連載をしていただけたらいいのに! と思ったことを記しておきたいと存じます。円城さんは、その小説においてもしばしば数学をモチーフにしています。インタヴューの準備の一環として、手に入る限りの円城さんの小説やエッセイを、数学という観点から読み直して臨んだのでしたが、これらの作品がどうして面白いのか、改めてなんらかの形で考えてみたいという気持ちをそそられました(「文体百般」的な関心からも)。


伊東先生――長年、氏の著作や翻訳を通じて科学史に親しんできた読者として、つい「先生」とお呼びしたくなるのです――には、非常に長く広い文明史の視座から、数学という概念やその根底にあるものについていろいろとお尋ねしています。以前、伊東先生の講義を拝聴した折、先生が手元に手書きのメモを持って、ときどきそれを確認しながら話を展開してゆく様子を拝見して、機会があればあのメモを見てみたいものだと思っておりました。その願いが通じたのかどうか、このインタヴュー原稿をまとめるに際して、伊東先生からメモをお貸ししましょうとおっしゃっていただき、念願がかなったというおまけつきでした。


三宅さんは、しばらく前からネット上でゆるやかに交流しておりながら、これまで一度も直に話したことがありませんでしたが、心秘かに敬意を抱いてきた思索家・創作者です。編集部から、ゲームに関わる数学について載せるとしたらどんな人がいるだろうと問われて、真っ先に「この人しかいない」と思い浮かんだのが三宅さんです。目下、スクウェアエニックスで、ゲームAI(人工知能)の開発研究に携わっている彼の話は、数学とAIに限らず、心身・心脳問題、認知論、生態心理学、環世界論、哲学と、とどまることを知らない広がりと深さを湛えています。インタヴューで伺ったスクウェアエニックスの会議室のテーブルに、三宅さんが持ってきた書物の山がありました(といっても、蔵書のごく一部です)。その多様さを、ぜひ写真でお目にかけたいと思っていましたが、今回は果たせませんでした。


それぞれ忘れがたいインタヴューで、それから2カ月近く経とうとしているいまもなお、そこで伺ったお話や声が耳の底に残っています。じつに圧倒され、魅了されました。


ブックガイドは、限られた紙幅のなかではありますが、50冊弱の本を選んで詰め込んだ形になっています。準備の過程で500冊程度の数学書に目を通しましたので、そこから1/10を選んだ形です。


テレンス・タオの論文は、数式がどしどし出てくるものですが、仮にそれらの数式を読み飛ばすとしても、捉えがたい素数の性質を、いかにしてつかまえるかというアイディアとその展開は楽しんでいただければと念じて訳しました(当初、訳注も用意してみましたが、これは紙幅の関係で割愛となりました)。


もちろん、上記は特集全体の一部です。他にもいろいろな角度から数学の姿を浮かび上がらせる、読み応えたっぷりの原稿が目白押しです。お手にとってご覧いただければ、これ幸い。


これでひとまず2013年前半の仕事はおしまい。後半は、人文系のテーマが中心となる予定です。


⇒新潮社 > 『考える人』 > みんな数学を愛してる。
 http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/editor/45.html


⇒新潮社 > 『考える人』 > 数学は美しいか その1 インタビュー
 http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/high/high222.html
 『考える人』ウェブページでの特集号紹介その1です。


⇒ウラゲツブログ > 2013年07月07日
 http://urag.exblog.jp/18055918/
 月曜社の小林浩さんにご紹介いただきました。