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ベンヤミン流 手紙の書き出し方

2012年12月29日にfacebookに投稿した文章。

facebookは「n年前の今日、あなたはこんな投稿をしましたよ」てな具合に自分の投稿を表示する機能があって、書いたまま忘れていたものを見せてくれます。

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小澤京子先生のメールの書き出しに関する投稿に触発されて、棚から『ベンヤミン著作集』の書簡の巻を取り出して、書き出しばかり眺めてみたら、これがなんだか面白い。

a. 「きみになんぞ、手紙を書くいわれはないんだがな。」

 冒頭からツンデレ全開。

 

b. 「ぼくには以前から道徳上のアキレス腱がひとつある。」 

  冒頭から中二病全開。

 

c. 「今日の午前は講義がないので、手紙をいくつか書くつもりだ。まずきみへのから。」

 「お前さんの事情なんか知らないよ」と思わせておいて、第二文で一気に懐に入り込む高等テクニック。

 

d. 「カルラさん――ぼくは王立図書館の「専門研究者用」の読書室で、数冊の本をまわりに積み上げて、これを書いています。」

 cの応用編と思われるが、惜しいことに続く第二文が省略されてしまっている。おそらくc以上に高度な(略

 

e. 「ぼくはこの手紙をもって完全に、なんの留保もなしに、あなたと絶縁しますが、どうかこの手紙を最後の誠意のあかしとして、それ以外の何ものでもないものとして、受けとってください。」

 言いたいことをズバっと表明することから始める潔いスタイル。絶縁と誠意が一つの文のなかに、こんなふうに並ぶこともできる。

 

f. 「手紙は嬉しかった。」

 飾らない書き出し。文脈を選ばず今日から使える。ただし、eのような手紙をもらった場合には慎重を要する。

 

いやあ、参考になりますネ。

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出典は『ヴァルター・ベンヤミン著作集』第14巻(晶文社、1975)でした。品切れ中かな。 

ヴァルター・ベンヤミン著作集 14 (14) 書簡1

ヴァルター・ベンヤミン著作集 14 (14) 書簡1

 

 小澤京子先生の新たなご著書が現れる日も楽しみに待っております。

都市の解剖学―建築/身体の剥離・斬首・腐爛

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