ダリや

今朝、隣家の人が、外に出て「ダリ、ダリ、ダリ」と声を上げているので目覚めました。

なんだろうと思って聞くでもなく聞いていると、「こっちへおいで」「そっちは危ないよ」など、いろいろなことを言っています。

「そうか、お隣さんではダリを飼ってるのか……あのヒゲを……」

と納得して、再び眠りに落ちようかというところ(なにしろ明け方までお酒を飲んで夜更かししていましたから……)、再び、「ダリ、ダリ、ダリ!」と、今度は先ほどより少し声が大きくなっています。ちょっと苛立ち混じりのような、でもそれを抑えようとしているような、そんな声の調子に聞こえます。

ダリはよっぽど強情な奴なのかな、と思っていると、「ミャーオ」という猫の声。「そう、こっちへおいで!」と呼びかけは続きます。なんだ、猫ちゃんか。

しかし、猫はミャオミャオ言うばかりで、ちっとも呼びかけ主のほうへ寄りつかない様子。私は朦朧とする頭で、「そういえば猫って、呼びかけたらやってくるものなのかしら(犬なら呼ばなくても飛んで来ちゃうけど)」とか、「うちの近所には、猫に紐をつけて散歩をするおじさんがいるなぁ」などとぼんやり連想します。なおも呼びかけが続くなか、「もしかして、隣人殿はその辺の野良猫に名前をつけて呼びかけてるだけなんじゃなかろうか」などと空想が働きもしました。

そうする間にも(って、私はベッドのなかでうだうだしながら空想してただけなんですが)、「ダリ、ほら、こっちだよ」と呼びかけは続きます。「ミャーオ」「ダリ! こっちに来なさい!」

およそ30分近くそんなやりとり(?)があった後で、隣人はとうとう諦めたのか、家へ入ってしまったようでした。相変わらず猫は表で「ミャーオ」と鳴いています。

まさか、お隣さんは猫じゃなくて、なにか別のものに声をかけていたんじゃあるまいか。例えば、ダリとか……そんな空想に頭を占拠されながら、私は再び眠りに落ちたのでありました。

(2013年01月02日、facebookへの投稿から)

 

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