対談:片山杜秀+山本貴光「魅力に満ちた赤き偏愛」

「週刊読書人」第3280号、2019年3月8日号に、片山杜秀さんとの対談が掲載されました。片山さんの新著『鬼子の歌――偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)の刊行を機に行われた対談です。

読みどころの多いこの本の魅力をお伝えしたいと考えて、片山さんにお話を伺っています。

私自身、日本のクラシック方面の作曲家については、片山さんが企画・解説しておられたナクソスの「日本作曲家撰集」というCDシリーズから、それまで知らなかった曲や名前だけ聞いたことのある曲に触れる機会を得たり、ご著書が出るたび読んできたりしただけに、今回はじめてお目にかかってその執筆の仕方などを伺えて、たいへん嬉しい機会でした。

この対談は「週刊読書人ウェブ」でも公開されております。全6回に分けての掲載で、3月13日に最後の第6回が公開となります。また、対談の様子を撮影した動画も一部公開されています。

 

イヴェント:ヒロ・ヒライ+山本貴光「印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス」

2019年3月9日(土)に、ジュンク堂書店池袋本店でヒロ・ヒライさんと対談いたします。

題して「印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス」。

ヒライさんが監修した『ルネサンス・バロックのブックガイド』(工作舎、2019年2月刊行予定)の刊行を記念した対談です。

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(画像は工作舎のページからリンク)

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鼎談「ゲームと物語の構造から探る、FGOの魅力とは?」

『BRUTUS』2019 3/15号 No. 888「特集=WE♡平成アニメ」(マガジンハウス)の「Fate」シリーズコーナー掲載の鼎談でお話しをしています。

話し相手は沖田瑞穂さん(神話学)、小宮真樹子さん(英米文学)のお二人、この鼎談の企画・構成の橋本麻里さんが司会です。

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「ゲームと物語の構造から探る、FGOの魅力とは?」というタイトルで、ゲーム『Fate/Grand Order』(FGO)についておしゃべりしています。

『FGO』の個別具体的な内容そのものというよりは、その設定や構造について、神話、物語、ゲームの観点から検討しております。沖田さんと小宮さんのお話がとにかく面白く、私もたいへん勉強になりました。

鼎談の最後に、3人で勝手にサーヴァント(『FGO』に登場するキャラクター)を考えようというので設定したものを、おかざき真里さんが描き下ろしたイラストも載っています。

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特集全体も、この30年ほどの日本のアニメーションを振り返る好企画です。

『BRUTUSU』は「危険な読書」特集号(No. 884)に続く二度目の登場となりました。

 

『ルールズ・オブ・プレイ』新版

ケイティ・サレンとエリック・ジマーマンの2人による『ルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎』(拙訳、ソフトバンククリエイティブ)という本がある。

原著は2003年にMIT Pressから刊行されたもので、これを上下巻に分けて、2011年と2013年に出した。なかなか仕事をしない訳者のおしりを叩き続け、ただでさえ大冊で大変な同書の編集を担当してくださった星野浩章さんには大変お世話になった。

もともと発行部数が多くなかったこともあり、上巻はほどなく品切れとなった。定価は上下巻とも4400円(+税)なのだが、Amazonでは一時期1万円以上の値がついたりもして、目下も定価以上で売りに出ている。

この本は、ゲームをつくろうと思う人にとって大変参考になる教科書だけに、常に新刊で手に入る状態が望ましいのだけれど、諸事情あってそうもいかないまま今日に至る。

なんとかして手に入るようにできないものかと思っていたところ、ニューゲームズオーダーの沢田大樹さんからお声かけいただいて、このたび新版刊行にこぎつけることができた。

この機会にと訳文を見直して、当時は邦訳がなかった文献でその後翻訳された本の書誌を追記したり、旧版で見つかった誤植なども直すことができたのは訳者としてもありがたい。

今回は4分冊で刊行される。本書全体は4つのユニットから成っており、ユニットごとに分冊にするという次第。しかも以前からご要望の多かった電子書籍版を中心として、冊子版も出すという形。

私の作業が遅れ気味のため、当初の予定より刊行が遅れているが、ようやく第1分冊の電子書籍版が3月17日に発売される。価格も第1分冊(ユニット1)は1000円とお求めやすくなっている。

ゲーム制作を学ぶ学生のみなさんはもちろんのこと、ゲーム開発・運営の現場でご活躍中のみなさんにも目を座右に備えてもらえたら嬉しい。原著が2003年刊行ということは、すでに15年以上前の本というので、随分古いんじゃないかと思われる方もいるかもしれない。ご心配なく。本書は、どうしたらプレイヤーが楽しめるゲームをデザインできるか、よりよいユーザー体験を提供できるか、という基本について考える本であり、それ自体が古びることはない。

また、ちょっと余計なことを言えば、こうした本がそれなりの読者に読まれることが分かれば、日本語以外の言語で書かれたゲームデザインの良書を翻訳する企画も動かしやすくなると思う。

目下は、下巻(ユニット3、4)の訳文を確認中。下記のニューゲームズオーダーのページに記されているように、順次刊行する予定なのでどうぞお楽しみに。

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(写真は、原書と入手困難となっている旧版上下巻)

 

寄稿「マルジナリアでつかまえて」第18回

『本の雑誌』2019年3月号(本の雑誌社)は、「出版業界消えたもの列伝」特集。

「出版業界におけるFAXの運命は!?」という記事がある。そうかFAXってまだ使われているんだ。

私がコーエーにいた頃(1994-2004)、ゲーム会社でもFAXは現役だった。PlayStation用のゲームをつくってソニー・コンピューター・エンターテインメントに提出すると、向こうでテストプレイをして、毎日夕方にその日判明した問題点を書いたFAXが届くのだった。その時刻になるとチーム一同、「今日はソニーからどんな指摘が届くかな……」とドキドキしながら待ったものである。

その後、物書きになってからしばらくの間、雑誌に原稿を書くとゲラがFAXで届き、朱筆を入れたゲラをやはりFAXで送り返していた。なんでFAXなんだろう、PDFか画像ファイルでメールに添付してくださったらいいのにと思ったものの、当時のコンピュータ環境だといまより手間がかかったかもしれない。

いつしか出版方面ではFAXを使わなくなり、ゲラのやりとりもPDFがほとんどだ(本のようにページ数が多い場合はプリントアウトも併用)。

FAXの利点があるとすればなんだろう。受信したという意識の強さはメールに比べてはるかに大きいかもしれない。なにしろ装置からカタカタカタと音を立てながら紙がはき出されるので、FAXがある場所にいればイヤでも気づく。モノの威力と言いましょうか。

それはそうと『本の雑誌』です。

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連載中の「マルジナリアでつかまえて」は第18回となりました。

今回は「言葉の壁を乗り越える」と題して、漢文の訓読について書いております。f:id:yakumoizuru:20190224015409j:plain

第18回ということは、連載開始から1年半ということですか。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

『ボルヘス――無限の迷宮』

『ボルヘス――無限の迷宮(Borges, el laberinto infinito)』(2018)という本を、藤井光さんのTwitterへの投稿で教えてもらう。

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(画像は、下記の記事ページからリンクしています)

 Nicolás Castellさんによる記事はこちら。

イヴェント「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」

2月22日は、ゲンロンカフェのイヴェント、伊勢田哲治×三中信宏「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」で司会を務めました。

以下では、イヴェントで触れた本について簡単にご紹介してみます。

今回の対談イヴェントのきっかけとなったのは、『系統体系学の世界――生物学の哲学がたどった道のり』(けいそうブックス、勁草書房、2018)で、三中さんが、須藤靖さんと伊勢田哲治さんの対談本にコメントしたくだりでした(同書347ページ以下)。

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三中さんは、須藤さんの科学者としての立場からの意見にも、伊勢田さんの科学哲学者としての立場からの意見にも同意できないと書いています。

2018年の夏にこの本の刊行を記念した鼎談イヴェントを、やはりゲンロンカフェで行ったのですが、その鼎談後のおしゃべりで、いっそのこと須藤さん、伊勢田さん、三中さんの3人で話す場を設けたらどうだろうという話になって、今回のイヴェントが実現されたのでした。

須藤靖さんと伊勢田哲治さんの対談本はこれです。

『科学を語るとはどういうことか――科学者、哲学者にモノ申す』(河出ブックス、河出書房新社、2013)

科学哲学はなにをする学問なのか。それは科学とどんな関係があるのか。およそ300ページにわたって議論が続きます。一切の予定調和と妥協を排した対談は、スリリングといっては生ぬるく感じるような激論です。読んでるこっちの情緒も揺さぶられます(お二人のどちらの立場に共感するかによってもまた違う揺れ方をするでしょう)。

これを読むと、プラトンが描くところのソクラテスと対話する相手は、どれほど物わかりがよい人なのかと思えます。須藤さんは、腑に落ちないことや納得のいかない点を明確に何度でも指摘するし、それを受けた伊勢田さんはそのつど角度を変えて説明を試みます。

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また、伊勢田さんの近著に『科学哲学の源流をたどる――研究伝統の百年史』(叢書・知を究める13、ミネルヴァ書房、2018)があります。19世紀から20世紀初頭にかけての科学哲学の流れを探る本です。「サイエンティスト」という言葉の来歴なども検討されています

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また、今回の科学哲学をめぐる対談に直接関係しませんが、社会科学における因果の考え方に検討を加えた本として、佐藤俊樹『社会科学と因果分析――ウェーバーの方法論から知の現在へ』(岩波書店、2019)を並べて読むと面白いかもしれません。

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2月22日のゲンロンカフェの対談、伊勢田哲治×三中信宏 司会=山本貴光「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」は3月1日までニコニコ動画のタイムシフトでご視聴いただけます。(冒頭15分は無料でご覧いただけます)