増田聡『その音楽の〈作者〉とは誰か——リミックス・産業・著作権みすず書房、2005/07、amazon.co.jp


増田聡(ますだ・さとし, 1971- )さん(id:smasuda)の新著が書店に並んでいるようです。読了後にメモランダムを作成します(とりあえず刊行情報をば)。

つくり手と聴き手の境界領域を、細心の緻密さで分析し、錯綜する音楽シーン理解への突破口を開く重要な書。理論的な発展目覚ましい英米圏の研究蓄積を踏まえ、〈作者〉〈作品〉概念の再構築を試みる。「作者性」の核心を衝いた、ポピュラー音楽文化論の最前線を示す一冊。


社会に溢れる音楽は、それがいかにありふれた、何とでも取り替え可能なものであったとしても、「誰か」の能動的行為の所産であることには変わりない。その誰かの労働/仕事/作品はまた、その対価をも要求することにもなるだろう。「これは私の《作った》音楽だ」という声が、至る所から聞こえてくる。経済とロマン主義が音楽の上で交錯する。


では「その音楽」は誰のものか? あるいはそもそも「その音楽」とは何を指すのか? 茫漠とした問いではあるが、それを伝統的な美学の用語によって定式化するならば「音楽における〈作品〉あるいは〈作者〉とは何か? そして両者の関係とは何か?」という本書の問いとなる。


本書では、クラブ・ミュージックの技術的基盤、音楽産業の構造変容、著作権の思想史を通じて、現代ポピュラー音楽の「作者性」の布置状況を明らかにした。ポストモダニストが声高に叫ぶ「作者の死」というスローガンを疑い、現実の「拡散する作者」の在り様へと肉薄する思考を提示する。

みすず書房ウェブサイト紹介文より)


⇒ロック少年リハビリ日記・別館
 http://d.hatena.ne.jp/smasuda/


⇒作品メモランダム > 2005/04/30 > 増田聡+谷口文和『音楽未来形』
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050430/p1


みすず書房 > 『その音楽の〈作者〉とは誰か』
 http://www.msz.co.jp/titles/06000_07999/ISBN4-622-07125-8.html


もう一冊、みすず書房の新刊より。こちらは映画書。



★田中眞澄小津安二郎と戦争』みすず書房、2005/07、amazon.co.jp

1937年9月―1939年7月、一下士官として中国大陸で従軍。1943年6月には軍報道部映画班としてシンガポールに赴任、終戦の日を同地で迎える。これは小津安二郎が戦争と直接関わりをもった時間の総量だが、いわゆる「支那事変」時の「従軍日記」が生涯の日記のなかでもっとも緻密で濃密な記述に満ちていることは、ご存じの方も多いだろう(「戦地からの手紙」とともに小社刊『小津安二郎東京物語」ほか』に収録)。「しかし、彼はじつは日記のほかにもう一冊のノートを残していた」。本書第II部で全文公開の「陣中日誌」である。


山中貞雄の遺文に触発されて書き綴られた戦場スナップ「撮影に就ての《ノオト》」、火野葦平『土と兵隊』を批判した読書ノート、対日本兵工作員用のパンフレットをまるごと筆写した「対敵士兵宣伝標語集」ほか、「戦争という人間の頽廃の危機」のただなかで、非人称のカメラさながらすべてを記録にとどめようとする強靭な意志に貫かれている。しかも「従軍日記」とは「重ならない内容のほうが多い。日記と相補う形で、戦場の小津安二郎軍曹の見聞と思考を記録し、体験を伝える貴重な資料」なのである。


戦場とは何か。軍隊とは何か。小津安二郎の「戦争体験」とは何だったのか。新資料を発掘・提示しながら解き明かされる人間ドキュメント。

みすず書房ウェブサイト紹介文より)


みすず書房 > 田中眞澄『小津安二郎と戦争』
 http://www.msz.co.jp/titles/06000_07999/ISBN4-622-07148-7.html


杉浦日向子『百日紅(上)』
筑摩書房では、今年12月で創刊20周年を迎えるちくま文庫(総点数約1900点)の復刊アンケートを募集中。下記ウェブサイトに「品切れ本全点リスト」が掲載されており、最大20点までチェックをいれることができる。読みたかったのに永らく品切れだったあの書目にチェックをいれて投票しては如何。


⇒筑摩書房 > ちくま文庫復刊セールアンケート
 http://www.chikumashobo.co.jp/top/fukkan/



小熊英二対話の回路——小熊英二対談集』新曜社、2005/07、amazon.co.jp


小熊英二氏の新著は、これまでに行った対談を集成した一冊。目次は次のとおり。

・「日本」からのエクソダス村上龍
同時多発テロと戦後日本ナショナリズム島田雅彦
・人類史的転換期における歴史学と日本(網野善彦
・柳田の経世済民の志はどこへいったのか(谷川健一
・〈有色の帝国〉のアジア認識——柳田思想の水脈と可能性(赤坂憲雄
・戦後思想の巨大なタペストリー——『[民主]と[愛国]をめぐって』(上野千鶴子
ナショナリズムをめぐって(姜尚中
・秘密の喫茶店(今沢裕
・あとがき


新曜社 > 『対話の回路』詳細
 http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0958-X.htm


新曜社といえば、6月にこういう本も出ています。



★H.ベルテンス+J.ナトーリ編『キーパーソンで読むポストモダニズム(土田知則+時実早苗+篠崎実+須藤温子+竹内康史訳、新曜社、2005/07、amazon.co.jp
 Edited by Hans Bertens + Joseph NatoliPOSTMODERNISM: The Key Figures (2002)

20世紀の後半から末にかけて、近代の「大きな物語」の終焉の後を受けて、文化のあらゆる領域に突如現われた「ポストモダニズム」とは一体何だったのでしょうか。客観的価値、自己同一性、主体性、言語の透明性などを疑問視し、他者性、決定不能性、差異、アポリアといった問題を積極的に前景化するその思想を、アルチュセール、オースター、バルト、ボルヘスカルヴィーノドゥルーズエーコフーコーレヴィナス、トリン・ミンハ、…ヴォネガット、ヘイドン・ホワイトなどの多くの分野のキーパーソンたちをとおして具体的に描出します。ポストモダニズムのもつ多様で豊かな可能性が多面的に浮かび上がらせる「ポストモダニズム大全」となっています。


新曜社 > 『キーパーソンで読むポストモダニズム』詳細
 http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0949-0.htm


拙サイト「哲学の劇場」を更新しました。



ひきつづき雑誌『季刊パイデイア』(1968-1973、全16号)の目次情報を作成しています。今回は、第3号から第5号までのものをアップしました。近く、各号の書影も掲載する予定です。


★資料集 > 『季刊パイデイア』第3号
 http://www.logico-philosophicus.net/resource/paideia/03.htm
 雑誌『季刊パイデイア』第3号、1968年秋号の詳細目次です。特集は「変革の演劇——オフ・オフ・ブロードウェイ」。


★資料集 > 『季刊パイデイア』第4号
 http://www.logico-philosophicus.net/resource/paideia/04.htm
 雑誌『季刊パイデイア』第4号、1969年冬号の詳細目次です。特集は「ヌーヴォー・ロマンの可能性」


★資料集 > 『季刊パイデイア』第5号
 http://www.logico-philosophicus.net/resource/paideia/05.htm
 雑誌『季刊パイデイア』第5号、1969年春号の詳細目次です。特集は「瓦解と創造——革命中のアメリカ」


★資料集 > 『季刊パイデイア』
 http://www.logico-philosophicus.net/resource/paideia/index.htm
 雑誌『季刊パイデイア』の全巻構成です。簡単なメモランダムも付記しています。