★『ロード・オブ・ザ・リング――王の帰還』(The Lord of the rings: The return of the king, 2003)


絶望的な原作を、絶望的なままに映画化したピーター・ジャクソンはえらいと思う。重い任務を背負ってひたすら疲弊の旅路をゆくそれぞれの登場人物の行動はもちろんのこと、三部作全篇をつうじて繰り返される大規模戦闘(敵味方入り乱れての大量殺戮合戦)が醸す、はてのない不毛さと徒労感は見事である。こんなに「楽しくない」物語にたくさんの観客が足を運んでいるのもすごいことだと思う(もちろん、その「楽しくない」ところがいいわけですが)。とエエ加減なことを書いたのだが、考えてみれば昔から人は悲劇を観るために劇場に足を運びつつけてきたのだった。


ちかごろ劇場で予告篇が流れる『トロイ』もまた、原作(『イリアス』)どおりならそれこそ不毛きわまりない戦いが延々と描かれることになるはずでなんだかたのしみである。


実写版『キャシャーン』の予告はわけもなくかっこいい。画面の色調から一瞬、押井守が『アヴァロン』を撮りなおしたのかと思った。