斎藤充功『昭和史発掘——幻の特務機関「ヤマ」』新潮新書026、新潮社、amazon.co.jp


「ヤマ」とは戦時下に設置されていたという軍の防諜機関の通称。資料に乏しいなか、同機関に勤務していた友源次郎の手記にたどりついた著者が同手記その他の資料に基づいてヤマ機関の活動内容に迫ったのがこの本。結果は芳しくないものの、唯一の生存する関係者へのインタヴューも試みている。


斎藤には『謀略戦 陸軍登戸研究所(学研M文庫、2001/11)の著書もあり、陸軍中野学校登戸研究所の活動を扱っている。本書『幻の特務機関「ヤマ」』も正味半分くらいはヤマ以外の防諜機関にさかれていて、そんなところからも関連資料の少なさがうかがえる。


ヤマ機関がゾルゲの摘発に一役買ったというくだりなどは、通信/傍受をめぐる科学技術戦の様相を呈し、まことに興味深い。ヤマ機関の移動監視隊(乙班)が、「不法電波探知用方向探知機」を搭載した改造シボレー三台を走らせながら三点測定法で、ゾルゲらの電波発信位置を絞り込んでいったというのである。


手がかりとなる情報が少ないだけに、余計に知りたくなるという罠にかけられた一時間でありました。気がつけば着陸。所期の目的は果たせたからよしとしたい。



ヤマには関係なかろうが、昨年末に出たのをやりすごしていた――


海野弘『スパイの世界史』文藝春秋社、2003/11、amazon.co.jp


を読みたくなった。誰かお読みになりましたか。