神保町を歩いていると、ときおり著述家(に似た人)をお見かけする。今日も岩波ブックセンター(信山社)のまえあたりで、仏文学のK島氏とすれちがった。雑誌や書物でおみかけするK島氏から、いつもジャケットにシャツを着ている人という印象を勝手に持っていたのだったけれど、今日は日曜日のパパといった風情のカジュアルな服装で歩いていて新鮮であった。その直後、小宮山書店のまえあたりで、今度は科学史家のS木氏によく似た方が本を一山ぶらさげて歩いているのを見かける。


だからなにてなものだが、日ごろ書物を通じて知っている人びとが、この書物の街を徘徊していると思うとちょっぴりうれしいような心持になるんである。彼/彼女らはなにを手にしたのだろうか。


ついでの話だけれど、この神保町界隈の喫茶店にいると、かなりの確率で近所に会社がある出版社の編集者たちの会話が(聴くでもなしに)耳にはいってくる。担当している作家についての風聞(あの先生は気難しいことで有名、あの先生は原稿がはやいよ)、出版物のうれゆき、「よい本を読むひとはいないんでしょうか」という慨嘆、業界のうわさ、あたらしい企画。