吉屋信子『あの道この道』(文春文庫よ23-1、文藝春秋社、2005/01、amazon.co.jp)#0067


「いいえ、先生、私その金曜日には頭が痛かったの、土曜日は学校のお勉強が忙しくてピアノを弾くひまなかったの、それから日曜日は誰だって自由に遊びたいでしょう、そして月曜日はまた学校でしょう、忙しいのよ先生、そして昨日はお友達が遊びにいらっしゃったんで、ついまた弾けなかったの――そしてとうとう今日〔お稽古の日――引用者註〕になったんですもの、私つまンないわ……」


「ホヽヽヽ千鶴子様、いくら学校がお忙しいとおっしゃっても、まだ千鶴子様は尋常六年生でいらっしゃいますわ、そんなにお忙しいわけがないじゃございませんの」


という文体になにかを感じるあなたは、この一冊から吉屋信子(よしや・のぶこ, 1896-1973)の乙女小説を読みはじめませう。右の書影は、国書刊行会から出ている吉屋信子乙女小説コレクション』嶽本野ばら編)。