★『経』No.41、2005年3月号(ダイヤモンド社)
ビジネス書の作法をよく知らないからかもしれないけれど、この分野にはどこまでが本気でどこまでがネタなのか門外漢には判別がつかない書物や文章がたんとある。ダイヤモンド社が発行する月刊PR誌『経』もまた、そんなネタの宝庫。
ちなみに、私が以前勤めていたゲーム会社でも、「マーケティング」と称される一連の営為は、社員の視線から見ても悲喜劇的で、どこまでが本気でどこまでが(以下略)
いまやこの話題抜きには商談もまともに進まないとまでされる企業社会の必携アイテム「愛の流刑地」通称「愛ルケ」にも、五五歳菊治の思い通りに動く三六歳の人妻冬香という女性が登場するが、こんな話が大企業の幹部連中の心をかき乱しているかと思うと情けない。そこには、日本の男がいくつになっても成熟を望んでいないことも見てとれる。会話もなくただセックスに応じるだけの冬香にメロメロになっている中年および初老の企業戦士と、パソコンゲームの中にいるロリコン顔で胸が大きい女性キャラにしか興味を持てない秋葉系オタク青年の性根は実は同じである。
上記が事実ならほんとうに情けないことだ。細かいことを申せば、「秋葉系オタク青年」の嗜好について断定を下すのは、前述の展覧会を観てからでも遅くないと思う(結論はかわらないとしても)。ちなみに上記の文章のつづきはこう。
成熟できない日本。それは、成熟した女性に魅力を感じない多くの日本人男性に原因がある。
⇒日本経済新聞 > 朝刊小説 渡辺淳一の「愛の流刑地」
http://www.nikkei.co.jp/honshi/20041206ta7c6000_06.html
モダン・マーケティング(顧客第一主義)への反論の書、
捕らえどころのない今の顧客を捕らえるノウハウを示す書、そして、ポストモダン・マーケティング実践の書。
本書が示す、「売る」を効果的に実現するための覚醒の手段は、マーケティーズ(markeTEASE)すなわち、「トリック(T)」「限定(E)」「増幅(A)」「秘密(S)」「エンターテイメント(E)」である。
本書のいう「ポストモダン・マーケティング」を実践するには、レア感を高めるために発行部数を「限定」したり、内容についてももそっと「秘密」めかしたほうがよかったのではないか? とひとごとながら心配になった。
- ジェラルド・ザルトマン『心脳マーケティング——顧客の無意識を解き明かす』(ダイヤモンド社)広告
こうした問題に真正面から取り組む新しいマーケティング・パラダイムが「心脳マーケティング」である。この新しい試みには次の三つの特徴がある。
第一は、顧客の心の奥底にあって言葉で表現することが難しい「暗黙知」や「無意識」に焦点をあて、深層レベルの心や脳の働きを意味する「心脳」という概念を通じて、新たなマーケティングのあり方を模索している点である。
(中略)
第二は、認知心理学や脳神経科学など、一見ビジネスとは無縁な先端領域における研究成果を、マーケティングに応用している点である。
(中略)
第三は、最先端の学術成果を応用しながらも、ビジネスの現場で利用可能な手法として発展させた点である。
(中略)
残念ながら、日本ではまだこのような事例が数多く試みられているわけではない。
(藤川佳則「訳者が語る」、前傾誌、所収)
さて、その「心脳マーケティング」の奥義の限りをつくして制作されたであろう本書のマーケティング的な成否やいかに?
原題は、"How customers think"。
⇒日曜社会学>出不ろぐ de√Blog > 2005/02/17
http://d.hatena.ne.jp/contractio/20050217#p10
⇒哲劇メモ > 2005/02/17
http://d.hatena.ne.jp/clinamen/20050217#p4