★John R. Searle, Mind: A Brief Introduction (Fundamentals of Philosophy, MIT Press, 2004/08, amazon.co.jp


第六章「志向性」に進む。


サールには、志向性——心の哲学(坂本百大監訳、藤本隆志+坂井秀壽+野矢茂樹+渡辺忠+大杉佳弘+信原幸弘+生源寺知二+山田友幸+鈴木登+安藤道夫+冨田恭彦+大沢秀介訳、誠信書房、1997/10 [原書は1983]、amazon.co.jp)という書物がある。


これは、『言語行為——言語哲学への試論』(坂本百大+土屋俊訳、勁草書房)、『表現と意味』(未訳)とともに、サールの「心」と「言語」研究の三部作をなすと目される仕事の三作目にあたるもの。同書の第10章「志向性と脳」において、サールは手短かながら本書『Mind』その他「心の哲学」関係の仕事で展開されるアイデア——心身問題を「生物学的自然主義」の立場で解消——を書き留めている。


志向性の邦訳書は、13人の訳者による共訳で、監訳者の坂本氏がこんな風に弁明している。

文体、訳語の統一には全員で心を配った。しかし、それぞれの翻訳者の研究者としての良心、語感の趣味等により、いくつかの訳語はなおも不統一のまま残された。なかんずく、「意味」という訳語については、それがサールの最大の関心事、また、キータームでもあり、多くの訳者が自説にこだわった。

(坂本百大「監訳者あとがき」より)


たしかに章ごとに、あるいは章の前半と後半とで訳者が異なるため、日本語の文体が微妙に異なっている(「第八章 意味は頭のなかにあるのか」が「言語と現実の関係や如何」とはじまったのはちょっと受けました)。まだ原文と照合していないけれど、一種訳文カタログとしてながめてもおもしろい。


⇒誠信書
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