辻惟雄『奇想の図譜——からくり・若沖・かざり』 (ちくま学芸文庫ツ7-2、筑摩書房、2005/04, amazon.co.jp)#0356


『奇想の系譜――又兵衛―国芳ちくま学芸文庫ツ7-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)に続いて辻惟雄(つじ・のぶお, 1932- )氏の『奇想の図譜』が文庫化した。

日本美術が共有するもの——その第一は見る人の好奇心に訴える奇抜な発想と斬新な意匠であり、視覚を楽しませ遊ばせるエンタテイメントの精神、ひとことでいえば「おもしろさ」を追求する心である。敬虔な仏教美術の場合でも、毘沙門天の足にグシャリと踏まれた邪鬼の顔を見て思わず吹き出すことがある。「おもしろさ」の度合い、それは美術の価値を測る場合に私の物差しにつけられた目盛りだ、というといささか不真面目に聞こえるかもしれないが、気難しい老大家の学者が、若い人の発表を聞いて「フムなかなかおもしろい」とひとこともらしたら、それが最高のほめことばになる。この本で私が意図したのは、そういう意味合いでの日本美術における「おもしろさ」、いいかえれば「奇想」の諸相の紹介であり、それが自分のひとりよがりに終わっていないことをただ願うのみである。

(同書、298-299ページ)


どうも私は日本美術にどうも疎くって、と言っている暇があったらこの二冊の『奇想』姉妹編を読まれたい。門外漢の私が言うのもなんですが、掛け値なしにおもしろいですからして。


⇒作品メモランダム > 2004/09/13 > 奇想の愉悦
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