岩波書店編集部編『ブックガイド〈心の科学〉を読む』(岩波科学ライブラリー105、岩波書店、2005/05、amazon.co.jp)#0401


一口にブックガイドといってもさまざまな流儀がある。過日本書の予告を目にしたときは、「心の科学」に寄与している各分野から必読書をリストアップしたような書物を勝手に想像していた。ふたを開けてみると、本書はもっとゆるやかなもので「心の科学」へ至るさまざまな道、さまざまな入り口を示唆するようなブックガイドであった。


本書は専門を異にする10名の筆者がそれぞれ影響を受けた本を紹介するという体裁をとっている。10名の筆者の専門を並べると以下のとおり。

カント・認知科学黒崎政男)、神経生態学・言語起源論(岡ノ谷一夫)、作家(瀬名秀明)、心の哲学・認知哲学(信原幸弘)、教育認知心理学(子安増生)、神経心理学(山鳥重)、言語の認知科学大津由紀雄)、言語学(大堀壽夫)、神経心理学・高次脳機能研究(田中茂樹)、生態心理学(佐々木正人


選定の規準は詳らかではないのだけれど、言語/学に関わる筆者が四名はいっているのが印象的だ。また、専門に「心理学」が含まれている筆者が四名。では、「科学」はどうかといえば、黒崎氏と大津氏が「認知科学」を専門にかかげているものの、両氏はいわゆる「科学者」ではない*1


ここでハタと思うのは、「心の科学」とはなんであろうか? ということだ。黒崎氏と子安氏がこのことをとりあげて話の枕にしている。ただし、「こうだ」という回答を寄せているわけではない。そういう意味では本書の最後におかれた佐々木氏の文章から読み始めるのがよいかもしれない。アフォーダンス研究で知られる佐々木氏は「物の科学」との対比から「心の科学」を概説している。


さらにかっちりとしたブックガイドも誰か編んでくれないだろうか。


岩波書店 > 岩波科学ライブラリー
 http://www.iwanami.co.jp/hensyu/science/sclib/top.html

*1:もちろんそれが悪いという話ではない