江戸川乱歩と大衆の20世紀展」@池袋東武百貨店



作家をテーマにした展覧会はむつかしい。なにしろ主たる展示物はどうしたって作家の作品、つまりは文章や書簡、よくって愛用の道具や書棚といったものになるからだ。展示される資料にはもちろん手をふれることはできないから、開かれてあるページを眺めることになる。といってもこれは文句ではない。そういうものであると知りながら作家の筆跡や書物への書き込みなんかを垣間見ようとよろこんで観に行くのだから*1


この乱歩展では、原稿や覚書、「貼雑年譜」(はりまぜねんぷ=手紙や新聞記事などを貼りこんでコメントをつけたスクラップブック)、乱歩作品の掲載誌、蔵書の一部、乱歩の時代を偲ばせる公衆電話やフォード、貸本屋の店先を再現したジオラマ、ドラマ脚本やラヂオ放送(部分)、双六やメンコといった当時の関連物、乱歩が愛用した将棋盤に手品用品などが展示されていた。


この展覧会、訪れている人々も興味深かった。つまらなさそうにしている連れにむかってとうとうと薀蓄を傾ける人があるかと思えば、展示物をひどく熱心に手帳にメモしている者、パネルの内容を読み上げて携帯録音機に吹き込んでいる者、そのちかくで耳をふさぎながら展示に見入る者、展示品に手を伸ばしたり進入禁止ラインを超えて係りの人に注意される者……。


出口のところにある売店では、光文社版江戸川乱歩全集」(全30巻、刊行中)の既刊分をまとめて購入している人などもあり、ひとごとながらうれしくなる。


この催しに連動して、立教大学では旧江戸川乱歩邸の特別公開を行っている(今日が最終日)。



行ってみると30分待ち。会場にはいると参観できるのは、土蔵の入り口から一歩はいったところまでだった。書棚をガラス張りにして(書物を手にとれないようにして)もいいから書架のあいだをぐるりと歩いてみたかったといえば贅沢に過ぎるだろうか。


かくなるうえは、新保博久山前譲編著『幻影の蔵??江戸川乱歩探偵小説蔵書目録』(東京書籍、2002、amazon.co.jp)を手にいれようか。たしかあれ、土蔵のなかを見てまわれるんだったよなァ。


⇒光文社 > 「江戸川乱歩全集」
 http://www.kobunsha.com/rampozenshu/

*1:でも一番印象に残ったのが「探偵少年団双六」の盤面に描いてあったコマのひとつ「怪しい博士」なのはなぜか。