おしらせ

★イヴェント

10/29 石井雅巳+池田喬+山本貴光『西周と「哲学」の誕生』刊行記念イヴェント(代官山蔦屋書店)

・11/01 シンポジウム

・11/12 対談

 

★新刊

荒木優太編著『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』(明石書店、2019/09/01刊行予定)【寄稿】

本の雑誌編集部『働くわたし』(本の雑誌社、2019/08/28刊行予定)【寄稿】

田中佳祐著、竹田信弥構成『街灯りとしての本屋』(雷鳥社、2019)【寄稿】

ケイティ・サレン+エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎』(全4分冊、山本貴光訳、ニューゲームズオーダー、ユニット1:2019/03/17、ユニット2:2019/0511、ユニット3:2019/07/28、ユニット4:準備中)【翻訳】

・ジョン・R・サール『MiND』(山本貴光+吉川浩満訳、ちくま学芸文庫、2018/11)【翻訳】

・『投壜通信』(本の雑誌社、2018/09)

 

★連載中

・「マルジナリアでつかまえて」(『本の雑誌』)

・「季評 文態百般」(『文藝』)

・新連載近日開始予定

 

★ブログエントリ

京谷裕彰編『薔薇色のアパリシオン――冨士原清一詩文集成』(共和国、2019)

 

東京大学総合図書館所蔵亀井文庫 ピラネージ画像データベース

東京大学総合図書館所蔵亀井文庫所蔵の『ピラネージ版画集(Opere di Giovanni Battista Piranesi, Francesco Piranesi e d'altri)』(全29巻、フィルマン・ ディド兄弟出版社、1835-1839)を画像で閲覧できるウェブサイト。

亀井文庫についての同サイトの解説。

東京大学総合図書館所蔵亀井文庫は、旧津和野藩主亀井家の当主で後に伯爵となった亀井茲明(かめい・これあき、1861-1896年)が滞独中に購入した美術研究資料の寄贈コレクションです。多数の貴重書を含む西洋美術史関係の文献1,958点が収められています。

西周(1829-1897年)の門生であり美術に造詣の深かった茲明は、1886(明治19)年末、各国の帝室儀式調査および美術研究のため、ドイツに留学しました。渡独後、日本に美術学の基礎を打ち立てるという志を抱いて美学美術研究に専心し、ベルリン大学にて四年間学んだ後、ヨーロッパ一巡の美術見学を経て1891(明治24)年に帰国しました。

帰国後、茲明は日本美術振興に努めましたが、1894(明治24)年に勃発した日清戦争に写真班として従軍し、撮影した写真は『明治二十七八年戦役写真帖』(明治30年)として諸方に献納されました。しかし、この従軍によって健康を害した茲明は間もなく病床に伏し、1896(明治29)年7月、小石川区丸山町の邸で永眠しました。

茲明の死後、彼がベルリンで購入した書物の大部分が東京大学に寄贈され、「亀井文庫」として東京大学総合図書館に所蔵されています。

 

iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp

フェルナンド・ペソア『不安の書【増補版】』刊行記念イヴェントのレポート

「週刊読書人」2019年9月6日(第3305号)に、紀伊國屋書店新宿本店で行ったフェルナンド・ペソア『不安の書【増補版】』(高橋都彦訳、彩流社)刊行記念対談イヴェントのレポートが掲載されました。

杉田敦さんと90分ほど、ペソアについてお話ししました。

同号には、澤田直さんによるペソアの『アナーキストの銀行家』(近藤紀子訳、彩流社)の書評も掲載されています。

また、彩流社のウェブサイトで、イヴェント当日私からお配りした「ペソアのほうへ――意識という風景」(全16ページ)のファイルをダウンロードできます。これから読んでみようかなという方へのお誘いのつもりで書いてみたものです。ペソアの略歴や詩の特徴、簡単なブックガイドや、関連ウェブサイトのご紹介などもしております。

dokushojin.com

www.sairyusha.co.jp

『ルールズ・オブ・プレイ』ユニット4

毎度お騒がせしております、ゲームデザインの教科書、ケイティ・サレン&エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎』(全4分冊、拙訳、ニューゲームズオーダー、2019)の新版、最後の第4分冊「ユニット4/文化」が発売になりました。

「ユニット4」には、旧版の訳者あとがきに加えて、新たな訳者あとがきを書きました。旧版上下巻を刊行したのが2011、2013年。それから今日まで、ゲームをめぐる環境の変化やゲーム研究(Game studies)の進展もいろいろありました。それらを詳しくカヴァーすることはできませんが、ごく大まかに記しております。

この本を紹介するつど同じことを申しておりますが、原書刊行から15年ほど経つ現在も古びることなくゲームをつくる人の役に立つ本であると思います。ゲームのつくり方について考えたい人に、改めて広く読んでもらえたら幸いです。

今回はなにしろ電子書籍なので品切れはありません*1。必要な人のもとに届くといいなと思います。

年内には、ペーパーバック版も少部数ですが発行される予定とのことです。詳しくは、ニューゲームズオーダーのサイトでご確認くださいませ。

 

さて、これにて『ルールズ・オブ・プレイ』邦訳新版の仕事も一段落です。

この秋は、なかなかうまく書けずにいた『日本語文法小史(仮題)』(みすず書房)と、なかなか訳し終えることができずにいた『時間のカルトグラフィ(仮題)』(フィルムアート社)に改めて専念して、よい本になるようがんばります。

すでに原稿があるものとしては、「webちくま」の連載をもとにした吉川浩満くんとの共著『人生がときめく知の技法(仮題)』(筑摩書房)のための改稿を施したところ。この後、詰めの作業を進めて参ります。

最後は仕事の近況でした。

 

www.newgamesorder.jp

*1:と書きながら思ったのですが、電子書籍の発行元がなくなったりした場合、当該電子書籍はどうなるのでしょう。

京谷裕彰編『薔薇色のアパリシオン――冨士原清一詩文集成』(共和国、2019)

このたび共和国から刊行された、京谷裕彰編『薔薇色のアパリシオン――冨士原清一詩文集成』(共和国、2019)は、生前一冊の詩集も出さないまま、1944年に36歳で戦没した詩人、冨士原清一(1908-1944)の(ほぼ)全作品集です。

f:id:yakumoizuru:20190825145841j:plain

生前刊行されたのは、二冊の翻訳書と、ニューヘブリディーズ諸島(現バヌアツ)の地誌のみだそうで、このたび共和国から刊行された『薔薇色のアパリシオン』は、この三冊を除き、現時点で知られている冨士原清一の詩文と翻訳を編んだもの。一巻ものの全集ですね。

私自身は、冨士原清一について、かつて鶴岡善久編『モダニズム詩集I』(現代詩文庫特集版3、2003)に掲載されていた数編を目にしただけでしたので、とても新鮮な心持ちで読み進めているところです。

『薔薇色のアパリシオン』の巻末につけられた年譜を見ると、冨士原清一は17歳頃から詩作をはじめ、1927年、19歳のときに橋本健吉(北園克衛)らと日本初のシュルレアリスム専門誌『薔薇・魔術・学説』を創刊とあります。

アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』が1924年のことですから、当時の通信事情などを鑑みても、はやい時期の受容といってよいのではないでしょうか(とは、よく調べずに思ったことです。当時、日本からヨーロッパへは船で40、50日ほどかかっていた模様)。

f:id:yakumoizuru:20190825150247j:plain

 

「魔法書或は我が祖先の宇宙学」(1930)の一節を引いてみます。

蒼白なる科学者よ あの層雲の伏魔殿に注意し給へよ 最小口径砲と羽飾のついた鳥糞射出口及び潜伏処の望遠鏡 これらは三位一体である この明快な真理の微風の後で科学者は捕虫網の如く微笑する
「魔法書或は我が祖先の宇宙学」(1930)

像を結びそうで結ばないこの感じ。眼に入る言葉からイメージが喚起されるのに、それが直前に眼にした言葉のイメージと整合しない感じ。その、ちぐはぐなのになにかがつながっている面白さ。

いま引いたくだりに触れて、私の脳裏には、珍しいものを集めて並べた驚異の部屋(ヴンダーカンマー)のような、なんの役に立つのか皆目見当のつかない科学者の奇妙な装置を陳列した部屋を訪れたような、そんな気分がもたらされるので気に入っています。

f:id:yakumoizuru:20190825150008j:plain

そうそう、8月30日に予定している古田徹也さんとのゲンロンカフェでの対談では、古田さんのご著書『言葉の魂の哲学』(講談社選書メチエ)を巡って話す予定です。そこでは、『不安の書』(高橋都彦訳、彩流社)を中心にフェルナンド・ペソアのことも話そうと考えていたところでした。この『薔薇色のアパリシオン』に触れて、『言葉の魂の哲学』の観点から、シュルレアリスムの詩を読むとどう見えるのかということも話し合ってみたいと思いました(と、急に宣伝)。

f:id:yakumoizuru:20190825150218j:plain

この本に集められた詩文には、いまご紹介したようなシュルレアリスムの詩も多いのですが、今回見つかったという中学在学中の詩文もあります。詩人の仕事を、初期のものから時系列で辿ってゆく楽しみを味わえるのはやはり得がたい経験です。なにしろこうして順に読むとき、詩人の変身の様子と、変身を通じて変わらずにあったものとを共に見ることができるのですから。

『薔薇色のアパリシオン』は、冨士原清一の詩文と訳文を集めて編んである他に、共和国の他の本と同じように、巻末の附録も充実しています。清一が訳したダンディ『ベートーヴェン』の「訳者の言葉」の他、高橋新吉と瀧口修造の追悼文、そして詳細な年譜と解題、編者あとがきが収められています。

清一とは「直ぐ近くのアパートに自分もいたので好く一緒に飲んで喧嘩したりした」という仲だった高橋新吉の追悼文を読むと、清一の詩について「ホンヤクの臭さはなく、いづれも彼の鍛錬場で陶冶された後打ち出された一振の短刀にも比すべき作品で、高貴な味ひのあるものであった」と評しています。それこそ月並みな感想ですが、実にうまいことを言うものですね。共和国からは、その高橋新吉の作品集、松田正貴編『ダダイストの睡眠』(境界の文学、2017)も出ています。

手元に届いたばかりの『薔薇色のアパリシオン』に触れて、詩人はこのようにして甦るのだ、と感じ入った次第です。

つい最近も、高見順『いやな感じ』(共和国、2019)の再刊をはじめ、日本文学の見失われた過去に(も)光を当て直す共和国と下平尾直さんの仕事を、今後とも応援してゆこうという思いを新たにしました。

一度眼にしたら忘れがたい装幀は、宗利淳一さんによるもの。600部限定とのことなので、気になる方はおはやめにどうぞ。

また、同書に挟み込まれた「共和国急使」第31号によると、近く同書のコレクターズエディションが、同社通販サイト「共和国ANNEX」で、66部限定で発売されるとのことです。

f:id:yakumoizuru:20190825150351j:plain

www.ed-republica.comgenron-cafe.jp

本の雑誌編集部『働くわたし』(本の雑誌社)

本の雑誌編集部『働くわたし』(本の雑誌社、2019年8月28日刊行予定)に、ブックガイドを書きました。

http://www.webdoku.jp.s3.amazonaws.com/kanko/assets_c/2019/08/9784860114336-thumb-autox500-15309.jpg

さまざまな職業に従事する女性たちへのインタヴュー集です。

公式サイトから目次を引用します。 

・福本奈津子(十勝ばんえいクリニック) 獣医

・田口玲子(OZO BAGEL) ベーグル店店主

・早瀬真夏(亜細亜印刷) 印刷機オペレーター

・柚木和代(J.フロントリテイリング株式会社) 関連事業統括部長/執行役常務

・椎名ゆかり 海外マンガ翻訳・研究

・土器屋由紀子(認定NPO富士山測候所を活用する会) NPO理事

・五十嵐友理(鷗来堂) 事務

・石田由美子(東京開智法律事務所) 弁護士

・五味洋子(五味醤油)

・五味雅子(五味醤油)

・梅村由美(SCAI THE BATHHOUSE) キュレトリアル・ディレクター

・松倉宏子(鷗来堂) 校閲者

・鹿毛静穂(肉とハーブ マツノヤ) 代表兼オーナーシェフ

・小倉和子(ヘアーサロンオグラ) 理容師

 

[働くわたし ブックガイド]
・働くわたしの来た道 山本貴光

・原田マハを読む/谷洋子の知られざる生涯 佐藤寛子

・均等法世代のつぶやき ムラタ タカコ

 「働くわたしの来た道」と題して、10冊ほどご紹介しています。

 

www.webdoku.jp

 

 

★073/1021:カール・クラウス『黒魔術による世界の没落』(山口裕之+河野英二訳、現代思潮新社、2008)

★073/1021:カール・クラウス『黒魔術による世界の没落』(山口裕之+河野英二訳、エートル叢書18、現代思潮新社、2008)

*手元に来た本を記録するシリーズです。

f:id:yakumoizuru:20190814141047j:plain

 

Karl Kraus, Untergang der Welt durch schwarze Magie. (Kösel-Verlag, 1960)の抄訳。

原書49篇から18篇、ページ数では4割を訳出とのこと。

収録された文章は次のとおり。

・黙示録

・勝利者の像

・印刷と転載

・私を黙殺する権利と義務

・地震の後で

・ハラキリと文芸欄

・ライオンの頭、あるいは技術の危険性

・ハイネとその顛末

・ハイネとその顛末 あとがき

・二つの生き方のあいだで

・ネストロイと後世

・ヨーロッパ文化の到来だ

・ニグロ

・白人女と黒人男

・あいつぁユダヤ野郎じゃねえか!

・貴族との交際への憧れ

・フランツ・フェルディナントと才覚者たち

・黒魔術による世界の没落

・解説

・訳者あとがき

冒頭の「黙示録(読者への公開書簡)」にこんな一節がある。

われわれは機械を作り出すのに十分な複雑さを備えていた。いまやわれわれはあまりに原始的になり、機械を自分に仕えさせることもできない。

(同書、7ページ)

なんだかSNSで連日どこかでなにかが「炎上」しているのを眺めているときの気分を思い出す。

偶然ではあるけれど、現在、人工知能の深層学習技術などが「黒魔術」と呼ばれているのを連想すると、味わい深いタイトルでもあります。

 

版元である現代思潮新社による同書の紹介ページはこちら。

www.gendaishicho.co.jp