2010-01-01から1年間の記事一覧

コンピュータの「記憶」の脆弱さ

ちょっと挑発的な言い方になってしまうけれど、コンピュータの「記憶」に不安を抱いたことがない人は、あまりコンピュータを使い込んでいないか、よほど運がよいかのどちらかではないかと思う。 例えば、ゲーム会社の現場のように、何百台かのコンピュータが…

手前味噌のようで誠に恐縮ですが、拙著をお読みくださった皆さんの感想をご紹介したいと思います。自画自賛めいて、いささか恥ずかしくもありますが。 去る9月12日の東京新聞の書評にて、横山広美さんに書評で紹介していただきました。一部を引用します。 こ…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その6

日本の書店で、コンピュータ関連書の棚の前に立ってみると、面白いことが分かります。 そこに林立する書物のほとんどは、なんらかのマニュアルなのです。 今なら、iPadやiPhoneの活用ガイドのようなハードの解説書、Word、Excel、Photoshop、Illustrator、Fl…

マッドな、あまりにマッドな。

マッド・サイエンス、あるいは、マッド・サイエンティストと言ったら、どんな営為や人物を思い浮かべるだろうか。 寝食も忘れて余人にはとんと見当もつかない怪しげな研究に没頭し、それだけに身だしなみもなおざりで、髪はぼさぼさ、よれよれでポケットの辺…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その5

拙著『コンピュータのひみつ』(朝日出版社、2010/09)が刊行されました。書店のコンピュータ書コーナーに置かれています。 牧野伊三夫画伯による、松に猿という一見不思議な絵をあしらった表紙が目印です。装幀は、アリヤマデザインストアの有山達也さんと…

寝転びながら『千のプラトーを読む』 02

*2010/09/11 19:30 誤記に訂正を施しました。 前回は、冒頭の2文を読んだところで終わりました。著者は二人で『アンチ・オイディプス』を書いたのだけれど、二人がそれぞれ数人だったから、二人と言いつつも多数だった、という不思議な書き出しです。 続い…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その4

ブルーノ・ムナーリは、「機械主義宣言」という文章でこんなことを言っています。 現代は機械の時代である。われわれは機械の真中に生きており、働くにも、遊ぶにもすべて機械のお世話になっている。しかし、われわれは機械の気質や本性や動物的な欠陥につい…

寝転びながら『千のプラトーを読む』 01

ドゥルーズとガタリの『千のプラトー――資本主義と分裂症』が、このたび河出文庫に3分冊で収められることになった。訳者は、宇野邦一、小沢秋広、田中敏彦、豊崎光一、宮林寛、守中高明の6名。原書は1980年、翻訳書は1994年だから、刊行から30年、翻訳から16…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その3

「コンピュータってなんですか?」という問いに対して、あなたならなんと答えるでしょうか、と前回問いかけました。 この「Xとはなんですか?」というのは、なかなか厄介な問いかけです。見かけはシンプルですが、しばしば子どもが「イヌってなあに?」「会…

書籍を巡る物質と記憶のモンダイ 1

*2010/09/02 AM01:55 若干字句を訂正し、末尾にリンクを追記しました。 電子書籍を巡る議論を見ていて、これは「記憶」ということをどう考えるか/考えないか、という態度の違いを映し出す出来事ではないか、と思う。 私自身は、電子書籍も従来の書籍も、使…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その2

さて、「コンピュータってなんですか?」というお話でした。 みなさんなら、これになんと答えるでしょうか。あるいは、周囲にいるコンピュータに詳しい人に尋ねてみたら、あるいは、お手元の本を開いたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。 「コンピュー…

おしらせ

更新を怠っていたプロフィール欄に、2009年以降の仕事について追記しました。 ⇒作品メモランダム > プロフィール http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/about ここのところ、コンピュータ、プログラム、ゲーム方面の仕事が多めでしたが、おかげさまで、これに…

脳と心をめぐる六つの書簡

茂木健一郎・斎藤環『脳と心――クオリアをめぐる脳科学者と精神科医の対話』(双風舎、2010/08、ISBN:4902465175)が刊行されました。 同書は、2007年から双風舎のウェブサイトで掲載が始まった茂木さんと斎藤さんによる往復書簡をまとめたものです。3往復都…

『コンピュータのひみつ』のひみつ その1

春から夏にかけて、『コンピュータのひみつ』(朝日出版社、2010/9/10刊行予定)という書物の制作に取り組んでいました。何回かにわたって、この書物についてお話ししてみたいと思います。 * 書店にはすでに馬に食わせるほどコンピュータ書があるというのに…

2010年上半期のあれこれ

ご無沙汰しております。 2010年の前半は、一橋大学大学院で、「新たなる百学連環――芸術篇」なる講義を担当しておりました。これは、前学期で担当した、哲学・思想篇の姉妹篇です。なにしろ、百学連環とは、学術全般を見渡そうという話なので、学術、つまり、…

西荻ブックマーク 第41回 リテラ・ウニヴェルサレス公開編集会議

ここしばらく「百学連環」というテーマについて、あれやこれやと考え続けています。 などと言えば、少しは格好もつくようですが、そもそも明治の啓蒙知識人・西周が、欧州の諸学術全体を概観してみせた講義「百学連環」に想を得て、古今東西、学術と呼ばれて…

巨大な小宇宙の開闢

bibliotheca hermetica(BH)というウェブサイトをご存じだろうか。 「自然魔術とカバラ」「占星術」「ルネサンス・バロックの科学と文化」「フィチーノ」「薔薇十字の覚醒」「ルドルフ2世とその宮廷」「ヘルメス主義」……と、ヨーロッパ初期近代の思想――そう…

twitter――脳内シャッフル革命/ポスト談話室滝沢

twitterを本格的に使い始めてからというもの、それまで利用していたネット上の各種サーヴィス(ウェブサイト、ブログ、mixiなど)は、それまで以上に使わなくなりつつあります。1回140文字以内のつぶやきで、ぼそぼそと思いつきを述べることの、いったいどこ…