2005-01-01から1年間の記事一覧

★岡崎乾二郎+松浦寿夫『絵画の準備を! Ready for Painting!』(朝日出版社、2005/12、amazon.co.jp) 歴史の上には、その出来事の前後で決定的に物事が変わってしまうという画期の数々がある。そうした画期を事後の眼で見るとき、その出来事のインパクトを…

2001年の暮れに、吉田武氏の『オイラーの贈物』がちくま学芸文庫に入ったとき、ちょっと新鮮な印象をもったことを覚えている。文庫では、横書きで数式が列挙されるスタイルの数学書をあまり見かけることがないからだった。数少ない例のひとつが岩波文庫で、…

ブックガイドついでに、近刊予定のブックガイドから。 ★上野千鶴子+成田龍一+岩崎稔編著『戦後思想の名著50』(平凡社、2006/01予定、4582702589) 戦後思想を形作った50冊の「名著」を読みなおしながら、戦後啓蒙の成立、戦後啓蒙の相対化、ポストモダ…

★有坪民雄+守屋淳『最強! 戦略書徹底ガイド』(SoftBankCreative、2005/12、amazon.co.jp) ブックガイドとは、大袈裟に言えば現存する全ての書物の集合から、限られた数の書物を選び出し、並べ、解説を加えたメタ・ブックだ。 もちろん実際に「現存する全…

★『現代思想』第33巻第13号、2005年12月号(青土社、amazon.co.jp) 特集は、「1990年代論——規律から管理へ」。特集の目次だけ拾えば以下のとおり。 ・酒井隆史「鋳造と転調」 ・渡辺治「「構造改革」政治時代の幕開け 政治改革から軍事大国化・新自由主義へ…

★『ユリイカ』2005年12月号(青土社、amazon.co.jp) 特集は、「野坂昭如——いまこそNOSAKAだ!」。 アニメ化された「火垂るの墓」を観てはらはらと紅涙を絞る乙女に、「でもね、野坂といったら『エロ事師たち』が代表作で」「着ぐるみを着てキンチョールのCM…

2005年11月の平凡社ライブラリーは、上掲書のほか以下の二冊。 ★ブルーノ・シュルツ『シュルツ全小説』(工藤幸雄訳、2005/11、amazon.co.jp) 20世紀の悲劇を背負ったヨーロッパ辺境が生んだ一抹の光。クエイ兄弟の映画でカルト的人気を誇る独自の作品世界…

★伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』(平凡社ライブラリー558、平凡社、2005/11/10、amazon.co.jp) 『詩人たち ユリイカ抄』がこのたび平凡社ライブラリーから再刊された。本書は、1948年(昭和23年)に書肆ユリイカを興した伊達得夫(だて・とくお, 1920-196…

★荒井晴彦『争議あり——脚本家荒井晴彦全映画論集』(青土社、2005/10、amazon.co.jp) 複数の人間の協働によってつくられる作品では、最終的に出来上がった作品から、個々の参加者の貢献度合いを推し量るのはむつかしい。 私はかつてゲームの開発に携わって…

(承前)今回の特集号にあらわれる、アカデミー(学問)、文学、エクスプロイテーション映画、おかんアート、バンド、女子オタ、アキバ系ガジェット、アニメ、ゲーム、お笑い、ジャニオタ、メガネ男子萌えといった対象は、ファッション、化粧品、ダイエット…

河出書房新社の新刊書より。 ★廣瀬純『美味しい料理の哲学』(シリーズ道徳の系譜、amazon.co.jp)【哲学】 ★『日本文芸史 第七巻 現代1』(amazon.co.jp)【文学史】 以下は11月の新刊から。 ★星野智幸『最後の吐息』(河出文庫、2005/11/08予定、amazon.co…

★『ドゥルーズ——没後10年、入門のために』(KAWADE道の手帖、河出書房新社、2005/10、amazon.co.jp) 河出書房新社のシリーズ「KAWADE道の手帖」の最新刊は、ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, 1925-1995)を取り上げている。 副題に「入門」を謳っているも…

ちなみに平凡社ライブラリーの2005年10月の新刊書目のもう一冊は、 ★工藤雅樹『古代蝦夷の英雄時代』(平凡社ライブラリー、平凡社、2005/10、amazon.co.jp) 古代蝦夷は、日本民族の成立とアイヌ民族の成立の谷間の存在で、英雄たちが主導する高度に発達し…

★荒木経惟『写真ノ話』(白水社、2005/10、amazon.co.jp) 写真ついでに最近眼にした写真書から。 荒木経惟の主著にして写真家志望者の教科書! ロンドンでの大回顧展にあわせ、これまでの制作秘話を一挙公開! デビューから現在までの自作を説明しながら、…

★飯沢耕太郎『[増補]都市の視線——日本の写真 1920-30年代』(平凡社ライブラリー555、平凡社、2005/10、amazon.co.jp) 1989年8月に創元社から刊行された親本を改訂・増補した一冊。日本の1920年代から30年代の写真を論じた表題作「都市の視線」のほか、野島…

★「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部 [混沌]」(東京都写真美術館) 写真の誕生を概観する第1部、19世紀末から1930年代のモダニズムの時代を検証する第2部、日本の1930年代から1960年代における写真史の紆余曲折を12名の写真家の仕事で辿った…

★『フリースタイル』 vol.2, autumn 2005(フリースタイル、amazon.co.jp) 季刊雑誌『フリースタイル』の第二号は、特別座談としてやまだないと氏、よしながふみ氏、福田里香氏の三人による鼎談「私たちの「少女漫画」」を掲載している。この鼎談、『ユリイ…

★『ユリイカ』第37巻第12号、2005年11月(青土社、amazon.co.jp) ◆1:文化系・女子・カタログ 批評にはいまだ広大な未開拓の領野が残されている。もっとも批評という言葉でその人が何を思うかによってその領野の広さもちがってくるのであって、たとえば批評…

★ジェイムズ・ストレイチー『フロイト全著作解説』(北山修監訳、人文書院、2005/08、amazon.co.jp) 本書は、イギリスの精神分析家ジェイムズ・ストレイチー(James Strachey, 1887-1967)が編集した「標準版フロイト全集(The Standard Edition of the Com…

ここのところ立て続けに興味深い映画書が刊行されている。順にメモランダムを作成していこう(もちろん、映画書以外も)。 ★カレル・チャペック『チャペック映画術』(田才益夫訳、青土社、2005/10、amazon.co.jp) チェコの多才な作家カレル・チャペック(K…

大西巨人氏の『神聖喜劇』が漫画化されるとのことです。去年末に報じられた映画化へ向けての動きに続いて、同書の愛読者には気になるニュースです。 『漫画 神聖喜劇』の刊行が決まりました。 (全六巻 A5判 ソフトカバー) 原作 大西巨人/作画 野副信久…

★飯田隆編著『知の教科書 論理の哲学』(講談社選書メチエ341、講談社、2005/09、amazon.co.jp) 『言語哲学大全』(全4巻、勁草書房、1987-2002、4326153652)などの仕事で知られる飯田隆(いいだ・たかし, 1948- )氏の編集による論理の哲学入門書。フレー…

★伊奈信男『伊奈信男写真論集——写真に帰れ』(平凡社、2005/09、amazon.co.jp) 写真に関心のある向きには見過ごせない一冊。伊奈信男(いな・のぶお, 1898-1978)の評論を集成したもの。 1932年、『光画』に発表された「写真に帰れ」は、日本における写真論…

★海野弘『陰謀と幻想の大アジア』(平凡社、2005/09、amazon.co.jp) 海野弘(うんの・ひろし, 1939- )氏の最新刊。上記の『満鉄調査部』とも絡んでくる一冊。今月の平凡社は、個人的に必読書が目白押しでうれしい悲鳴。 日本の近代史の「満州」から「大東…

★小林英夫『満鉄調査部——「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』(平凡社新書289、平凡社、2005/09、amazon.co.jp) 戦時中は国策調査を手がけ、満鉄の一機関に収まらなかった調査部の40年の軌跡を辿る。さらに昭和17年の満鉄調査部事件に関して、新史料をもと…

★林信吾+葛岡智恭『昔、革命的だったお父さんたちへ——「団塊世代」の登場と終焉』(平凡社新書288、平凡社、2005/09、amazon.co.jp) いよいよ大量定年を迎える団塊世代。“年金持ち逃げ”で去るのか、有終の美を飾るのか? 戦後史をたどりつつ、かつては理想…

★井上太郎『モーツァルトと日本人』(平凡社新書290、平凡社、2005/09、amazon.co.jp) 「モーツァルトを愛してやまない」井上太郎(いのうえ・たろう, 1925- )氏の新著。これは何冊目のモーツァルト書になるのかわからないが、 明治時代の西洋音楽の受容に…

★津堅信之『アニメーション学入門』(平凡社新書291、平凡社、2005/09、amazon.co.jp) アニメーションの定義からはじまって、その定義にそった歴史、作品の分類、アニメ研究とその歴史、作品各論——と、新書のヴォリュームとはいえ体系的にアニメーションを…

本格ゲーム・デザイン論

★Katie Salen + Eric Zimmerman, Rules of Play: Game Design Fundamentals(MIT Press、2003/11、ISBN:0262240459) 本書は、ゲームのデザイン(設計)を理論的かつ実践的に考察する書物である。 ここで「ゲーム」とは、ヴィデオ・ゲームやコンピュータ・ゲ…

★編著=小山騰+写真=臼井秀三郎『ケンブリッジ大学秘蔵明治古写真——マーケーザ号の日本旅行』(平凡社、2004/09、amazon.co.jp) 平凡社の新刊書より、明治関連の写真集。 ケンブリッジ大学図書館が所蔵する明治の古写真を初公開。マーケーザ号で日本を訪…