★『ドゥルーズ——没後10年、入門のために』(KAWADE道の手帖、河出書房新社、2005/10、amazon.co.jp)
河出書房新社のシリーズ「KAWADE道の手帖」の最新刊は、ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, 1925-1995)を取り上げている。
副題に「入門」を謳っているものの、それにとどまらない内容になっている。もしこれからドゥルーズの本を読んでみようと考えている読者は、松本潤一郎氏による「はじめての読者のためのドゥルーズ哲学入門」、ドゥルーズの各著作の読みどころを各1〜2ページで概説した「ドゥルーズ完全著作解題」、それとドゥルーズとの共著もあるクレール・パルネ氏へのインタヴュー「思考の鞭打ち——ジル・ドゥルーズ『アベセデール(L'Abécédaire)』について」(聞き手=エルヴェ・オヴロン+シリル・ネラ、廣瀬純訳)に目を通しておくとよいと思う。パルネ氏へのインタヴューは、かつてドゥルーズのインタヴュー(対話)映像『アベセデール(L'Abécédaire)』を制作のさい、聞き手をつとめたさいのドゥルーズの仕事のスタイルを中心に語っている。
このほかに、酒井隆史氏、萱野稔人氏、松本潤一郎氏による討議「管理権力から「来るべき民衆」へ——ドゥルーズを実践的に読むために」や、宇野邦一氏と前田英樹氏による対談「ドゥルーズのマテリアリスムとは何か——死活を問う哲学」、あるいは熟練のドゥルーズ読みによる論考など、読み応えのある文章が集められているが、(飽くまで入門者ということを考えると)、いったんこれらは脇においてドゥルーズの著作に向かったほうが好いかもしれない(もちろん読めればそれに越したことはない)。もちろん、これらの討議・対談・論考、すでにドゥルーズに取り組んでいる読者にとっては、新たな目で読み直すためのよき刺激になるだろう。
どの著作から読むかとなると、読者の関心の所在によっていろいろな入り口があるけれど、國分功一郎氏の次のアドヴァイスは傾聴に値すると思う。
これからドゥルーズを読もうとしている人は、一冊のモノグラフィーに挑戦する前に、本書〔『無人島』〕に収められた短い学術論文のどれか関心のあるものをじっくりと読むところから始めるのがよい。但し、一本でよいから、参禅する気持ちで、フランス語を一語一句追いながら、「誰に聞かれても全て説明できる」あるいは「ここだけがどうしても分からない」と断言できるまで読み、〔当該論文の〕参考文献の全てに目を通すこと。そうすれば著作の読解がずっと楽になる。
(國分功一郎「ドゥルーズ完全著作解題『無人島』」より/〔〕は引用者による)
なお、それで困る読者はいないかもしれないが、「ドゥルーズ完全著作解題」の原題表記に誤植が散見されるので注意されたい。たとえば、『プルーストとシーニュ』Proust et pes signes(正:les)、『ベルクソンの哲学』La berugsonisme(正:bergsonism)、『狂人の二つの体制』Deux Régins de Fous(正:Régimes)など。
詳細な目次は、Hさんによる「ウラゲツ☆ブログ」の以下のエントリで参照できる。
⇒ウラゲツ☆ブログ > 2005/10/19
http://urag.exblog.jp/2353243/
また、ドゥルーズについては拙ウェブサイト「哲学の劇場」に簡単な情報をまとめてある。
⇒哲学の劇場 > 作家の肖像 > Gilles Deleuze
http://www.logico-philosophicus.net/profile/DeleuzeGilles.htm
「KAWADE道の手帖」シリーズの既刊は以下のとおり。
★『中村元——仏教の教え 人性の知恵』(2005/09、amazon.co.jp)
★『西田幾多郎』(2005/06/21、amazon.co.jp)
★『サンカ——幻の漂白民を探して』(2005/06/16、amazon.co.jp)
★『宮本常一』(2005/04/15、amazon.co.jp)