ユリイカ』第38巻第11号 2006年9月臨時増刊号 総特集 稲垣足穂青土社、2006/09、ISBN:4791701526


同号に「計算論的、足穂的——タルホ・エンジン仕様書を寄稿しました。


足穂の作品を読んでいるとプログラムやその挙動に触れているような気がするのだけれど、それはなぜだろうという与太噺であります(いわゆる似てるよね分析)*1


拙文はさておき。同誌としては1987年の「特集*稲垣足穂 & Twinkling Stars」につづく二度目の足穂特集となる本号は、すでにいくつかのウェブログなどでも言及されているように、「書容設計」が洒落ています。まだ同誌既刊分525号を全部見たわけではないので(目下は300号くらい)あまり意味のない評言になりますが、ユリイカ史上屈指の出来映えではなかろうかと。なにしろモノ(objet)としてステキです。設計担当は、羽良多平吉氏。


足穂が気になる読者なら、全集未収録テキスト「新発見作品10篇」と、キネマクラブ*2による年譜「彼自身による稲垣足穂稲垣足穂著書目録」を読むだけでも本号を手にとる価値は十分にあると思います。そのほか、対談、鼎談、インタヴュー、エッセイ、論考、写真、まんが、カリグラムと、いろんなオモチャを一式セットでしまいこんだ楽しいトランクのような、それ自体が足穂の作品を思わせるような編集は、郡淳一郎氏によるもの。


垂野創一郎氏による解題「タルホ座新星群——稲垣足穂新発見作品解題」によると、渡辺一考、金光寛峯、佐藤周、加藤仁、高橋信行の諸氏によって捜索(再)発見された稲垣足穂全集』(筑摩書房)未収録作品は、69篇にのぼるというのですが、これらの作品、別のかたちで書物にならないでしょうか。



タルホってなに? という方は、『僕の”ユリーカ”』ちくま文庫、ISNB:4480420312)あたりから、おひとついかがでしょうか。いけますよ。


青土社 > 『ユリイカ』2006年9月臨時増刊号
 http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B0%F0%B3%C0%C2%AD%CA%E6


松岡正剛の千夜千冊 > 第879夜 稲垣足穂一千一秒物語
 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0879.html


一千一秒物語
 http://homepage3.nifty.com/beatles/taruho/

*1:これを書いている間中、なぜか、野坂昭如との対談でキスをすることになった足穂が、野坂氏に唇を奪われながら「もうええ、もうええ」と言っている写真が脳裏を離れませんでした。

*2:372ページの記載によると、この年譜と著作目録は、小野塚力、金光寛峯、佐藤周、垂野創一郎土屋和之、山口雄也、渡辺一考の諸氏の共同作業で編まれたとのこと。