ほぼ毎週金曜日、吉川浩満くんとともに配信しているYouTubeチャンネル「哲学の劇場」の番組「人文的、あまりに人文的」の第206回を公開しました。
今回は「哲劇のあいうえお」のコーナーです。言葉をひとつ選んで、それについて話すという内容です。
「あ」から出発して、今回は「ふ」について。
ということで「文体」についてあれこれ話しています。
そこで触れている執筆中の本について少し補足します。
この数年、『科学の文体(仮)』という本の執筆にとりくんでいます。最初に企画の提案を頂戴したのは、2016年あたりでしょうか。
はじめのうちは、企画のきっかけとなった『文体の科学』(新潮社、2014)という本で試してみたように、書かれたもの、刷られたものについて物としてのデザインの側面も含めて「文体(style)」を眺めるてみるということを、いわゆる自然科学や自然哲学と呼ばれる領域の書物を対象にもっと詳しくやってみる、という発想でした。
手許のメモを見ると、その翌年の2017年に transfer, transform (変換)という着想を得て、知識と呼ばれるものが多様に変換されてゆく様子を書物を中心に見てとる、という屋台骨ができました。
ここで「変換」とは、外界(世界)のなかの物や諸現象が、言語や図に変換されること、紙などの物質に変換されること、あるいはある言語から別の言語へと変換されることなどを含みます。formがtransするというので、変形/変型と言ってもよいかもしれません。
この見方を携えて、古代から現代にいたる自然科学/自然哲学の表現をあれこれ見てみるというわけです。
書いては捨てて、捨てては書いてを繰り返しており、なかなか書き進められずにいましたが、今回の吉川くんとのおしゃべりで少し話してみて、進められそうな気になって参りました。誰かと話すのは大事ですね。