阿部薫暗い日曜日(TOKUMA JAPAN COMMUNICATIONS, 1997, TKCA-71096, amazon.co.jp


阿部薫(あべ・かおる, 1949-1978)のライヴ録音。この演奏を聴いたベイシー(ベーシー)オーナーの菅原昭二(菅原正二)氏は、ライナーノーツにこんな言葉を寄せている。

阿部の一音は、客もほとんどいない「ベーシー」の静まりかえった夜の空気を、まるで日本刀をはらったように切り裂いた。縦横無尽に宙を舞う阿部のサウンドは美しい絶叫であり、”魂”の安らぎを与える壮絶なものであった…。


「魂の安らぎを与える壮絶なもの」という言い回しは、一見矛盾している。阿部の、音程が定かならぬ「絶叫」と「瞑想」のあいだを往復するような即興演奏は、騒音のようにけたたましいのではないか? というイメージを与えるかもしれない。しかし、実際演奏に耳を傾けていると、やかましいどころではない。しぼりだされるような音の奔流はむしろ心を落ち着かせる。「絶叫」であると同時に心に「安らぎを与える壮絶なもの」という形容はとても的確だと思う(ここにドラムやピアノがからむとまた異なってくるのだろうけれど)。


それにしても、二度と同じ演奏を再現しようのない即興演奏を、ディスクで繰り返し聴くというのも考えてみればおかしな体験だ(もちろん、有り難いことこの上ない)。


本ディスクに収録された曲目は以下のとおり。

1.アカシアの雨がやむとき
2.アルト・サキソフォーン・ソロ・インプロヴィゼーション
3.バス・クラリネット・ソロ・インプロヴィセーション
4.暗い日曜日


演奏=阿部薫 Alto Saxophone (1, 2, 4), Bass Clarinet (3)
録音=1971/12/06 一関・ベイシーにてライヴ収録(2, 3,4)/1971/12/04 秋田大学学園祭共用棟にてライヴ収録(1)


⇒作品メモランダム > 2005/02/021 > 映画『エンドレス・ワルツ』
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050121#p1