蒐書録#014:安田登『能――650年続いた仕掛けとは』

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★安田登『能――650年続いた仕掛けとは』(新潮新書732、新潮社、2017/09)

冒頭に能の効能が五つ書かれているのだけれど、長続きする組織作りのヒントになる、健康長寿の秘訣、心を穏やかにする、政治統治のマネジメントに有効というあたりまでは「ふむふむ」と読み進め、最後に「幻夢能の構造はAI(人工知能)やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)など先端技術にも活かせて、汎用性が高い」と出てきて「!」となる。以前、『おくのほそみち』をRPGとして読み解いておられたのも思い出されて、こんなふうに伝統芸能や古典とハイテクやゲームの話をつなげられるのは安田さんならではなしえない面白さだなあと引き込まれます。安田さんは『あわいの時代の『論語』: ヒューマン2.0』(春秋社)も刊行されたばかり。

 

★ミハイル・ブルガーコフ『劇場』(水野忠夫訳、白水社uブックス215、白水社、2017/09)

 Михаи́л Афана́сьевич Булга́ков, Театральный роман (1966)

「20世紀のロシア小説」(白水社)の1冊として1972年に刊行された本がuブックスで再登場。編集は、藤原編集室。このところのuブックスは「これを新刊で出しなおしてくれないかなあ」と願っていた書目があれこれ入って、とてもうれしくますます好きになりました。

 

★リサ・クロン『ストーリー・ジーニアス――脳を刺激し、心に響かせる物語の創り方』(布川由美恵訳、フィルムアート社、2017/08)

 Lisa Cron, How to Use Brain Science to Go Beyond Outlining and Write a Riveting Novel (2016)

前著『脳が読むたくなるストーリーの書き方』に続いてフィルムアート社から翻訳刊行。文学の研究でも、まだ脳科学を応用とまではいかないまでも、人間の認知のしくみを考慮した認知文学論(Cognitive Literary Science)の試みが広がりつつありますね。小説に限らず、ゲームのシナリオを書く人も前著とあわせて目を通しておくとよさそうです。