『ゲームの教科書』4刷

2008年に馬場保仁くんと書いた『ゲームの教科書』(ちくまプリマ-新書098)の増刷4刷が決まったとお知らせをいただきました。

もう8年前の本ですが、流行の盛衰によって陳腐化しない内容に仕立てようと念じてつくっただけに、うれしく思います。

刊行時は、例に取り上げるゲームが古めなのはどうしてですか? と鋭いツッコミをいただいたりもしました(笑)。そう、最初から古いからそれ以上古びないのです。

というのは半分冗談で、最新動向は他に任せて、基本を押さえてみようという意図もあり、現在のゲームの基礎をつくったような例を多く取り上げたのでした。

機会があれば、続篇あるいは拡張版をこしらえたいと念じております(と言うばかりで進んでおりませんけれど!)。 

ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

 

 

学校・対談・原稿

ぼやぼやしていたら4月も半ばになりました。ご機嫌いかがお過ごしでしょうか。

今年も東京工芸大学と東京ネットウエイブならびに同別科(高校課程)で講義を担当いたします。

後者は去年まで、週3日12コマ+土日の体験講座を担当しておりましたが、今年は週1日4コマに減らしております。これで空いた時間を使って遊びほうける……ではなくて、お約束している本や執筆・翻訳に充てようという作戦です。

来年度はこの方面の仕事をさらに減らして(あるいは絞って)参りたいと念じております。

 

 

お話はかわりまして。

考える人 2016年 05 月号

考える人 2016年 05 月号

 

先日発売になった『考える人』2016年春号(新潮社)に、相棒・吉川浩満くんとの対談「生き延びるための人文」第1回「知のサヴァイヴァル・キットを更新せよ」を掲載いただきました。

同誌はこのつどリニューアルを行って、誌面も刷新されています。ページ数は減ってスリムになりましたが、内容は濃厚です。今回の特集は「12人の、『考える人』たち。」

今号から連載をはじめた糸井重里さんが主宰する「ほぼ日」で、『考える人』のリニューアル記念イヴェントが開催されるようです(下記リンク先をご覧あれ)。4月15日から17日までの予定です。

吉川くんと私も、上記対談に関連するリーフレットを書き下ろしました。会場で配布されると思いますので、ご笑覧くださいませ。

www.1101.com

 

 

もう一度お話はかわりまして。

少し前の『AERA』(朝日新聞出版)に、これも吉川くんとともに哲学史に関する図と文章を寄稿しました。西洋哲学の歴史2500年(!)を見開きに収めて勘所を紹介するという趣向です。

急なご依頼に応じて書いた原稿は、最終的に編集部によって架空のインタヴュー形式に仕立てられ、その一部のみが使われる形となりました。

元の原稿は、図には何を表現しているのかを説明したものなので、もともと長い文章ではないとはいえ、一部のみの掲載となったのは著者としては残念なことであります。

また、図も私たちが指定していない人名が編集部によって断りなく追加されるなど、不本意な形になっております。(中にはご提案をいただいて追加・削除したものもあります)

ともあれ、いろいろな意味で勉強になった出来事でした。記念として、ここに記録を残す次第です。

 

★おまけ

最初にノートに描いた図の下書きと原稿です。

 

f:id:yakumoizuru:20160308043640j:plain

続きを読む

Internet Archiveで読める「四庫全書」

Internet Archiveを利用して「四庫全書」を読めますよ、というブログ記事。

ブログは、トロント大学のチェン・ユータン図書館のもので、最近は更新されていない模様。

 

⇒Chen Yu Tung East Asia Library > Siku Quanshu (四庫全書, SKQS) Available Now Through the Internet Archive

 http://ealuoft.blogspot.jp/2010/01/siku-quanshu-skqs-available-now-through.html

Chen Yu Tung East Asia Library (University of Tronto)

 http://east.library.utoronto.ca/

 

こんなのも出ているのね。CD-ROM153枚……。

www.frelax.com

Agustín Barrios Mangoré, Julia Florida

★Agustín Barrios Mangoré, Julia Florida, performed by Tatyana Ryzhkova

パラグアイのギタリスト、アゴスティン・バリオス=マンゴレ(1885-1944)の『フリア・フロリーダ(Julia Florida)』。演奏はタチアナ・リツコヴァさん。

www.youtube.com

 

アグスティン・バリオス - Wikipedia

⇒タチアナ・リツコヴァ公式サイト
 http://www.tatyana-ryzhkova.de/

三中信宏+山本貴光「本を読むときに系統樹で考えるための《可視化することばとビジュアル》」

2015年11月に、三中信宏先生と行った対談です。

全3回に分けて掲載される予定です。

(念のために申せば、ちょっと何を言っているか分からないかもしれませんが、タイトルは編集部によるものです。)

 

dotplace.jp

 

余談ですが、同ページの一番下に「関連するみんなの記事」という欄があり、三中先生ではないほうの三中も出ていて、混沌としております(笑)。

系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに | 新書おすすめランキング

三中がめちゃイケで不合格ってまじかよwwwwwwww

めちゃイケの三中が消されてから今日で1年wwwwwww

三中が落選したときの矢部の顔www 

 三中先生が不合格になったり消されたりしているわけではありません(と思います)。自動リンク機能の悪戯。

ゲンロンカフェ「人文学は本当に危機なのか?」

2016年03月02日(水)に、吉川浩満くんと、ゲンロンカフェで話します。

そもそも「人文」ってなんだろうという根本から、目下の神経歴史学のような試みまで、準備中の「百学連環」や『文学論』に関する議論も交えつつ整理・検討する所存。

ただいま鋭意準備中であります。

peatix.com

 

追記(2016.03.11)

当時はご来場・ご視聴いただき、ありがとうございました。

下記URLはtogetterのまとめです。

togetter.com

『タイタンの妖女』

円城塔さんの翻訳による『これで駄目なら』(飛鳥新社)を読んで、久しぶりにカート・ヴォネガットの小説を読みたくなった。

率直にいえば、私は初めて読んだときからこの方、ヴォネガットが書いていることの何割かについては、その面白さがわからずにいる。たとえば「きっと、ここ、笑えることを言っているんだろうな」と思いながら、笑いがこみあげてはこない感じといおうか。(似たような感覚を、マーク・トゥエインの小説に抱くことがある)

そういえば、『これで駄目なら』の中で、ヴォネガットはこんなことを語っている(同書は、ヴォネガットが大学などの卒業式で話したスピーチ集なのだ)。

ジョークとはどういう風に作用するのか? よくできたジョークはまず、人を考え込ませる。わたしたちはそういう真面目な動物なのだ。

(略)

ジョークの第二段階は、君たちの考えが無駄で、頭をしぼってひねり出した答えが的外れだって示すところだ。知性を試されているわけじゃなかったんだとはっきりしてほっとする。嬉しくなって笑い出すわけだ。

(『これで駄目なら』、円城塔訳、飛鳥新社、p.24)

ひょっとしたら、私はヴォネガットのジョークをちゃんと考え込んでいないだけなんじゃないかという気がしてきた……。

気を取り直して続けると、でも、だからつまらないというわけではない。その、わからない部分も含めて楽しく、気がかりな作家であり続けている(なにかと長くつきあうには、適度な分からなさが大事だと思う)。

 

手始めに『タイタンの妖女』(浅倉久志訳、ハヤカワ文庫SF262、1977)を何年ぶりかで読んだ。原書は The Sirens of Titan (1959)。

親から譲られた財産で遊び暮らす下品を絵に描いたような資本家の男が、ある宇宙規模の出来事に巻き込まれて挫折と栄光のあいだを往復する、そんな物語だ。複数の時空間に存在する男、異星人と、地球人を相対化するSFの道具立てにも事欠かない。

こんな言い方をすると、かえってヴォネガットの持ち味を殺しかねないけれど、資本主義に対する皮肉(「批判」と書こうと思ったけれど、「皮肉」のほうがしっくりくる)、軍事や宗教に対する皮肉、要するにいつまで経っても諍いを止めない人間たちにたいする皮肉が、込み入った筋書きによって描き出される(ただし、ヴォネガットは、自分も含め、そんな具合におバカな人間を愛してもいる様子が筆致から窺える)。

次々と展開する人間の悲喜劇に夢中になっているうちに、一抹の虚しさとも希望ともつかない気分が胸中でないまぜになる。ああ、この感じ、この感じ、中高生の時分、暇に飽かせてSFやファンタジー小説をむさぼり読んだ日々に去来したこの感じ。

加えて、かつては今以上にぼんやりしていたこともあって気づかなかったけれど、フィクションを読んでいるはずなのに、こっちがむずむずしてくるような諷刺の数々。その見事さ。今回は、ヴォネガット読みながら、そんなことにも目を向けてみようと思っている。お次は『スローターハウス5』を読むつもり。 

 

これで駄目なら  若い君たちへ――卒業式講演集

これで駄目なら 若い君たちへ――卒業式講演集

 

 

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/02/25
  • メディア: 文庫
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