大澤真幸『自由という牢獄――責任・公共性・資本主義』(岩波書店、2015/03、ISBN:4000610198

 だが――と人は言うだろう――、われわれはすでに自由な社会に生きているのではないか。若干の抑圧や限界はあるが、少なくとも「先進国」とされる豊かな社会においては、すでにおおむね、主要な自由は獲得されているのではないか。


 しかし、それならば、この閉塞感はいったい何なのか。この閉塞を打ち破る選択をしたい。まさにそのようなかたちで自由を行使したい。なのに、それができない。そもそも、何を選択すべきなのかもわからない。私が選択したいもの、選択すべきものがどこにもないようにすら思える。「好きなことをやってもよい」と言われているのに、無数の選択肢の中のどれがまさにその「好きなこと」なのかがわからない。どれひとつとして、ほんとうには私の情熱をかきたてない。


 これが、われわれの「自由」の現状ではないか。何かがおかしいのだ。しかし、何が問題なのか。

(同書「はじめに」より)


■目次

はじめに

第1章 自由の牢獄――リベラリズムを超えて
1 リベラリズムの時代
2 自由の困難
3 身体の所有
4 閉塞であるような解放
5 無罪性と有罪性
6 自由の可能条件
7 リベラリズム・アフター・リベラリズム


第2章 責任論――自由な社会の倫理的根拠として
1 責任の不発化
2 リスク社会
3 責任のもう一つの可能性
4 いくつかの提案


第3章 〈公共性〉の条件――自由と開放をいかにして両立させるのか
1 幽霊という敵
2 現れの空間
3 公共性の危機
4 「公」と「公界」
5 類と生命
6 〈普遍的公共性〉に向けて
7 もうひとつの民主主義


第4章 不・自由を記述する赤インク
1 不・自由を伝える赤インクがない
2 資本主義における格差問題
3 形式という剰余
4 自由の蒸発
5 神さえいれば…
6 大審問官に応える


■書誌

著者:大澤真幸
書名:自由という牢獄――責任・公共性・資本主義
頁数:325+pages
版元:岩波書店
発行:2015年02月
価格:2400円+税


■関連書


大澤真幸『〈自由〉の条件』(講談社、2008/05、ISBN:4062105160