岩波書店

エミール・デュ・ボア=レーモンについて

久しぶりに、コンスタンス・リード『ヒルベルト 現代数学の巨峰』(彌永健一訳、岩波現代文庫学術240、岩波書店、2010/07/16)を読んでいたら、ヒルベルトが若い頃、エミール・デュ・ボア=レーモン(Emil du Bois-Reymond, 1818-1896)の本が広く読まれたと…

岩波文庫を集め読む

いつの頃からか、岩波文庫をすべて集め読もうと思うようになり、1990年代半ばころからはとりあえず毎月の新刊を欠かさず手にとるようにしています。また、たまさか目にした既刊書目も入手して読んできました。 とはいえ、1927年の創刊で全体としては6千点ほ…

森の図書館司書便り:2023年11月の岩波文庫

ここしばらく、手元に届いた本については、Instagramに写真つきで投稿してきましたが、過去の投稿を参照するのが難しいのと、この頃、広告やらThreads(Meta社によるSNS)との連携やらで、なにかとガチャガチャして居心地がよろしくなくなってきたのとで、本…

トマス・アクィナス『神学大全』

トマス・アクィナス『精選 神学大全1 徳論』(稲垣良典+山本芳久編、稲垣良典訳、岩波文庫青621-3、2023/07/14) トマス・アクィナス(Thomas Aquinas, c1225-1274)の『神学大全(Summa Theologiae)』(1266-1273)から、編者の稲垣良典と山本芳久が重要…

『スピノザ全集』(岩波書店)、ついに刊行開始

岩波書店から『スピノザ全集』(全6巻+別巻)の刊行が始まるようです。 『スピノザ全集』の企てがあるということについて最初に耳にしたのは、もういつのことだったか忘れてしまいましたが、それこそ鶴首してお待ち申し上げておりました。 今回の全集では『…

「岩波文庫で読む「感染症」」第6回

岩波書店のチーム「なみのおと」が運営するnote「コロナの時代の想像力」で連載をしています。 「岩波文庫で読む「感染症」」第6回は、「見えないものから森羅万象を考える」と題して、ルクレーティウスの『物の本性について』を取り上げております。 古代ギ…

「岩波文庫で読む「感染症」」第5回を書きました

岩波書店のチーム「なみのおと」が運営するnoteの連載「岩波文庫で読む「感染症」」の第5回を書きました。 今回は、「環境のなかで人間と病をみる」と題して、ヒポクラテス『古い医術について 他八篇』について書いています。 ヒポクラテスは、病気を環境と…

「岩波文庫で読む「感染症」」第4回

岩波書店のnote「コロナの時代の想像力」に、連載「岩波文庫で読む「感染症」」の第4回を書きました。 今回は、古代ギリシアの歴史家トゥキュディデスの『戦史』に記述されたアテナイの疫病について眺めております。当人も感染したという疫病の実態について…

「岩波文庫で読む「感染症」」第3回

「岩波文庫で読む「感染症」」の第3回を書きました。 今回は、ボッカチオが『デカメロン』の序で、当時のヨーロッパを襲った「黒死病」のパンデミックについて、どのように書いているかを眺めております。 岩波文庫のボッカチオは、野上素一訳で全6分冊。番…

新連載「岩波文庫で読む「感染症」」

岩波書店のチーム「なみのおと」が運営するnoteで、新連載を始めました。 タイトルは「岩波文庫で読む「感染症」」といいます。 岩波文庫既刊6000余冊から、感染症に関わるものを選んで読んでみようという趣旨です。 第1回は「古典の小宇宙に問いかける」と…

J. S. ミル『功利主義』(岩波文庫)

岩波文庫、2021年5月の新刊に、J. S. ミル『功利主義』(関口正司訳、岩波文庫白116-11)が入った。 このエントリーでは、同書を中心として、書誌や関連文献についてまとめておこう(適宜追記してゆく予定)。 訳者によれば、もとは1861年に『フレイザーズ・…

マイクロノヴェルとしての『伊勢物語』

久しぶりに『伊勢物語』を通して読んでみた。 「むかし、をとこありけり」といって始まる恋物語。 むかしは全然そういうことが気になっていなかったけれど、いま読むと、断章形式の構造で、なんだかゲームAIにいろいろなパターンの恋愛行動をとらせた結果を…

インタヴュー「在野に学問あり」

ウェブページ「B面の岩波新書」に連載中の山本ぽてとさんによるインタヴュー・シリーズ「在野に学問あり」に、吉川浩満くん(id:clnmn)とともに登場しました。 (写真は同ページへのリンクです) このインタヴューについて最初に打診をいただいたときは、自…

「永遠に普請中の大伽藍」

「岩波新書創刊80年記念」の『図書』臨時増刊号(岩波書店)にエッセイを寄稿しました。 (画像はサイト「B面の岩波新書」へのリンク) 「永遠に普請中の大伽藍」と題して「はじめての新書」について書きました。 同号は非売品で、書店等で配布されるようで…

★大澤聡『批評メディア論――戦前期日本の論壇と文壇』(岩波書店、2015/01、ISBN:4000245228) 03月27日に東京堂書店で行われる大澤聡さんとの対談に向けて、本書を改めて精読する所存。 ■目次 序章 編集批評論 1 商品としての言論 ギルドから市場へ 2 批評の…

★大澤真幸『自由という牢獄――責任・公共性・資本主義』(岩波書店、2015/03、ISBN:4000610198) だが――と人は言うだろう――、われわれはすでに自由な社会に生きているのではないか。若干の抑圧や限界はあるが、少なくとも「先進国」とされる豊かな社会におい…

文学研究法

★桑原武夫編『文学理論の研究』(岩波書店、1967、ISBN:B000JA5JWK) 京都大学人文科学研究所による共同研究「文学理論」をまとめた書物。刊行は1967年。編者の桑原武夫による「序言」によれば、研究自体は、1960年5月13日に第1回が開催され、1966年8月19日…

『第1巻 主権と自由』

★責任編集=川出良枝『岩波講座 政治哲学1 主権と自由』(岩波書店、2014/03/26、ISBN:4000113518) 2014年に刊行が始まった「岩波講座 政治哲学」(全6巻)の第1巻。この講座は、書名にそうと明示されてはいないものの、要するに「近現代欧米政治哲学」をテ…

第五巻 身と心――人間像の転変

ここ何年か、「思想」ということがよく分からなくて、それを教えてくれそうな本に遭遇すると手にしております。ここのところは、ぺりかん社の『日本思想史講座』(全5巻予定)と『岩波講座 日本の思想』(全8巻予定、岩波書店)を中心に検討中。 『岩波講座 …

分子脳科学から見た記憶の仕組み

井ノ口馨『記憶をコントロールする――分子脳科学の挑戦』(岩波科学ライブラリー208、2013、ISBN:4000296086) いったい、厖大とはいえ限られた神経細胞のなかに、どうやってたくさんの記憶が蓄えられているのか。記憶の座と言われる海馬では、どうして記憶が…

古典ギリシアの碩学アリストテレスの伝存する作品を集成した『アリストテレス全集』(岩波書店)は、どこを開いても興味の尽きない書物だが、とりわけ愉快なのが『問題集』(προβληματα)と題された一冊だ。 この、成立過程がはっきりしていない書物には、お…

★鈴木忠『クマムシ?!——小さな怪物』(岩波科学ライブラリー122、岩波書店、2006/09、ISBN:4000074628) 世界について人間が知らないことが山ほどあるということを思い出させられるきっかけには事欠かないが、或る生物の生態を知るときにはいっそうその思いを…

これはやや旧聞に属しますが、上記に関連して。 岩波書店の雑誌『思想』2006年2月号では、「心のありかと性質の存在論」という特集を組んでいます。 ・柴田正良「〈導入〉よみがえったソクラテス——物理主義と心的因果の問題を理解するために」 ・柏端達也「…

★『科学』2006年3月号(岩波書店、2006/02) 脳といえば、岩波書店の科学雑誌『科学』の最新号は、「特集=意識・脳・身体の接続へ──デカルトの夢と最新脳科学」と題して脳科学特集を組んでいます。 特集の目次は下記のとおり。 ・R.エイドルフ+土谷尚嗣「…

★『思想』 No.977、2005年09月号(岩波書店) 特集は、「メタ・バイオエシックス」。前号の「医療における意思決定」とも関係するテーマで、以下の論考を集めている。 ・島薗進「思想の言葉」 ・香川知晶「「新しい死の基準」の誕生」 ・小松美彦「「有機的…

★ベンジャミン・リベット『マインド・タイム——脳と意識の時間』(下條信輔訳、岩波書店、2005/08、amazon.co.jp) Benjamin Libet, Mind Time: The Temporal Factor in Consciousness (Harvard University Press, 2004) 自分が何かをしようと意識するよりも…

★アラン・サヤグ+アニック・リオネル=マリー編『ブラッサイ写真集成』(堀内花子訳、岩波書店、2005/08、amazon.co.jp) 19世紀末ハンガリーに生まれたブラッサイは,ベルリンで美術を学び,1924年パリに出て,シュルレアリスムの芸術家たちやピカソ,ミラ…

★野村進『日本領サイパン島の一万日』(岩波書店、2005/08、amazon.co.jp) 90年前に南の島に漂着した山口百次郎,彼の誘いで移住した石山家.本書は山形出身の2家族を軸に日本人移民の苦難の歴史を壮大に紡ぎだす.後に日米両軍による凄惨なる戦場となるこ…

★佐藤泉『戦後批評のメタヒストリー——近代を記憶する場』(岩波書店、2005/08、amazon.co.jp) 破局と復興を生きる人々の心情を充填して展開された戦後の批評.文学作品を論じつつ,ナショナリズムや日本の近代を問い直した場が,何を記憶させ,何を見えなく…

★『思想』No.976、2005年08月号(岩波書店) 特集は、「医療における意思決定」。 ・加藤尚武「思想の言葉」 ・清水哲郎「医療現場における意思決定のプロセス——生死に関わる方針選択をめぐって」 ・立岩真也「他者を思う自然で私の一存の死」 ・柘植あづみ…