ゲルツェン『過去と思索』

2024年5月の岩波文庫の新刊として、ゲルツェンの『過去と思索』(一)(二)が刊行されました。

これは19世紀ロシアの思想家・作家のアレクサンドル・ゲルツェン(1812-1870)が、40代から50代にかけて書いた自伝的回想録で、当人の経験もさることながら、彼が生きた時代についてもさまざまに記されていて、その点でも興味の尽きない本です。

今回の岩波文庫版は、以前刊行された『過去と思索』(全3巻、金子幸彦+長縄光男訳、筑摩書房、1998-1999)をもとに、訳者のお一人である長縄氏が全巻を点検して修正・改訳を施したもの、とのこと。文庫で全7冊の予定。

目下は、いろいろな時代と場所の人が、どのような教育を受けたか、どんな学術が営まれていたかという点に興味があることもあって、そういう関心から読み進めております。

いま読んでいる第1巻は、生い立ちから大学卒業までを描いた第1部と、流刑に処される第2部の冒頭を収めています。ゲルツェンが通ったのはモスクワ大学で、当時教鞭を執っていた教授陣のことなども書かれています。アレクサンダー・フォン・フンボルトが来校した際の描写もあり、そういえば同時代人だったということも思い出されたりします。

ゲルツェンが、サン・シモン主義への共感で警察から睨まれ、半ば謀略のようにして拘留され、流刑に処されたところで第1巻が終わりました。第2巻に進もうと思います。

ついでながら、目下岩波文庫に入っているゲルツェンの著作は以下の通りです。

白203-1:『ロシヤにおける革命思想の発達について』(金子幸彦訳)
青N610-1:『ロシアの革命思想』(長縄光男訳)
青N610-2:『過去と思索(一)』(金子幸彦+長縄光男訳)
青N610-3:『過去と思索(二)』(金子幸彦+長縄光男訳)

この機会にゲルツェンに関連する本もあれこれ集め読んでみようと思います。