長沼美香子『訳された近代――文部省『百科全書』の翻訳学』(法政大学出版局、2017/02)
読もう読もうと思いながら、書店に行くたび遭遇できず、別の本を買うということを繰り返すこと1ヶ月。このたびようやく手にすることができました。
というと、そんなに読みたいならさっさと注文なり取り寄せなりすればいいじゃないのと言いたくなる向きもあろうかと思いますが、それはそれ。手にしたところで、仕事その他ですぐには読めないのなら、いっそのこと出会うまでの過程を楽しめばいいじゃない、という次第。
どこに置かれてるかな、なにと並べられているかしら、今日は会えるかなと、会いたくて会えなくて震える日々も今日でおわりです。散歩がてら出掛けた神保町で最初に入った東京堂書店の哲学思想書棚のうち、中国や日本方面の本を集めた一角に置かれていました。てなわけで、読む読む。
以下は、ご参考までに目次を写してみました。
本書の目的は、いまだかつて総体として本格的に読解されたことのない文部省『百科全書』という明治初期の翻訳テクストを研究対象に据えて、翻訳学の視点から探究することにある。
目次は次の通り。
序章 文部省『百科全書』への招待
一 翻訳テクストの研究
二 『百科全書』研究の意義
三 本書の構成
第一章 翻訳研究における「等価」言説――スキャンダルの罠
一 翻訳の理論と「等価」
二 欧米翻訳学事始
三 近代日本の翻訳論
四 日本の翻訳学
第二章 文部省『百科全書』という近代――ふぞろいな百科事典
一 国家的翻訳プロジェクト
二 翻訳機関の変遷
三 『百科全書』の輪郭
四 起点テクストについて
五 翻訳者と校正者の群像
第三章 「身体教育」という近代――文明化される所作
一 身体の近代
二 明治政府と「教育」
三 「身体教育」の行方
四 「体育」とは
五 国民国家の「スポーツ」
第四章 「言語」という近代――大槻文彦の翻訳行為
一 大槻文彦と「言語」
二 『言語篇』の刊行事情
三 文法をめぐる『言海』と『百科全書』
四 「言語」とは
五 ためらいがちな「言語」というもの
第五章 「宗教」という近代――靖国体制の鋳型
一 「宗教」と非「宗教」
二 翻訳語としての「宗教」
三 明治政府と「宗教」
四 『百科全書』における「宗教」
五 非「宗教」のカモフラージュ
第六章 「大英帝国」という近代――大日本帝国の事後的な語り
一 遡及することば
二 「大英帝国」とは
三 「帝国」の記憶
四 「人種」をめぐる大日本帝国
五 更新され続ける「帝国」
第七章 「骨相学」という近代――他者を視るまなざし
一 人体解剖図と翻訳
二 西洋近代の「科学」
三 「骨相学」とは
四 語るまなざし
五 疑似科学の近代
第八章 「物理」「化学」という近代――窮理と舎密からのフィクショナルな離脱
一 蘭学から英学へ
二 自然科学の翻訳
三 「物理」「化学」への跳躍
四 定義するテクスト
五 学校制度のなかの自然科学
第九章 「百科全書」という近代――制度の流通と消費
一 「百科全書」とは
二 『百科全書』の視覚制度
三 制度としての学知
四 新聞広告による流通と消費
終章 「翻訳」という近代――訳された文部省『百科全書』
一 翻訳語の遠近法
二 増殖する名詞
三 翻訳論的転回へ
あとがき
文献一覧
事項索引
人名索引
『百科全書』で検索し、古い順にソートした結果。