義務教育のどこかで、あるいは高校ぐらいの段階で、デザインのトレーニングを受けていない人たちがWordその他のワープロソフトで作成した文書を100本くらい読むという経験を全員にしてもらうのはどうか。
これを経験すると、イヤでもデザインやタイポグラフィの重要性が痛感されると思う。
なぜ100本か。10本くらいなら、「ちょっと読みづらいのもあったけど、まあそんなに時間もかからなかったしいっか」と流せる。ところが、100本、150本を続けて読んでいくとなるとそうはいかない。
ときどき遭遇できる、読みやすく感じる文書が神か仏のように感じられる、というところも合わせて味わいたい。
というのは、大学や企業でのレポートをまとめて読むたび空想することなのだった(文芸賞の下読みをした際にも)。
そもそも気持ちよく読めるレイアウトと、目にした瞬間「うっ、できれば読みたくないな……」と感じるレイアウトでは、内容の良し悪し以前(以外)で評価が左右されかねない、という現実的な問題もある。
裏腹にいえば、必要最小限でいいから、人生のどこかでデザインの基礎を学ぶと、お互いのためにもなるのではないかと思うのである。一生涯、デザイナーの手が加わらない文書を書く予定はないという人は例外として。