今日は一日家にいるし本を買うことはないであろう(飛行機に乗らなけりゃ墜落事故に遭わないようなものさ)――とたかをくくっていたのだが、運動がてらちょっと外出することにしたため、「一日家にいる」という前提が崩れた。でも大丈夫。犬の散歩みたようにしばし歩いて帰ってくるだけだから。


郵便受けに『NEW LEFT REVIEW』と『未来』。おほん、これは本じゃなくって雑誌だからね、キミ(飛行機に乗らなくってもあちらから堕ちてくることだってあらァね。技術は事故の発明だてなことを言った気がきいた人があったなァ)。この雑誌は帰宅後に回収しようというので郵便受けにおいてゆく。


そのあたりを徘徊す。花屋の軒先にあいらしいプードルあり。小さな個人書店に並ぶ女性誌をぱらぱらと立ち読み(今日は買わない)。写真店の店頭ではその店のおばあさんが自分で歌を吹き込んだテープがエンドレスで流れている。その歌はなぜかかならず「こんにちは赤ちゃん」の節で屋号を歌うところからはじまる。その前準備がおわるとやおら「あらぁ、かわいい赤ちゃん! たくさん写真に撮りましょうね〜」と有無を言わせないセールストークがはじまる。はじめてこのテープを聞いたときは何が起こったのかと混乱したものだが、人間は便利にできている。繰り返し聞いているとそのうちいちいち驚かなくなるのだ(そのかわりきっかけさえあれば彼女の歌声が脳裏で完全に再現できる体になってしまった)。


最近になって小生はこのセールス・トークにも季節によってヴァリエーションがあることに気づいた。今日聴いたテープでは「ほんとに暑い日がつづきますね〜。夏休みは海へ山へ! 写真をいっぱい(以下略)」と言っていた。


セールス・トークがおわるとフィナーレが待っている。そう、歌にはじまり歌に終わるんである。TVのCMで使われている歌の節まわしで「フィルムも、プリントも、XXXカメラでぇ〜」と微妙なブレ(ヴィブラートではない)をはらんだスリリングな余韻を残してテープは終わる。最近気をぬいているとこのオリジナルCMソングの歌声が頭のなかに響いていることがあって「これって幻聴?」と少しく焦った。


夕間暮れは少し風もあり、昼日中のような酷暑ではない。ああやっぱり歩くのは好いなァ、運動は好いものだなァとよろこびをかみしめているうちに、朝からお茶をいっぱい飲んだきり何も食していないことを思い出す。ここはひとつ底をいれようというので喫茶店にはいろうと思ったその矢先、自分はこれから喫茶店に赴こうというのに書物の一冊も携帯していないことに気づいた(がーん)。


そこで急遽近所の古本屋に立ち寄ること三十分。あとは結果をごろうじろ。 orz