★『美術手帖』Vol.56 No.850 2004年6月号(美術出版社)
 特集=デジカメ以前/以後――フォトグラフィから「デジグラフィ」へ


山本英夫ホムンクルス2』(小学館、2004/05、amazon.co.jp
頭蓋骨に穴をあける施術「トレパネーション」の効果を確かめたい医学生が、ホームレスの男・名越に代価を払うから実験させてくれないかと持ちかける。施術を受けた名越は左目だけでものを見ようとすると、おかしなものが見える体になってしまった。


ここで「ホムンクルス」とは、カナダの脳外科医ペンローズが患者の脳に電気刺激を与える実験を繰り返してつくりあげた一種の脳地図に与えられた通称。大脳皮質と身体の各部位の対応関係が示された図がよく知られているが、この図にはあたかも大脳皮質のうえにばらばらになった人間の部品が配置されたようでもあるため、「小人」を意味するラテン語ホムンクルス」と呼ばれている。


これがトレパネーションとどうからんでくるのかは読んでのおたのしみ。文献を調べてみると、脳にとりついた悪い霊を追い出すために(?)、頭蓋骨に穴を開ける手術の様子を描いた中世ヨーロッパの絵画なども残っている。


御託はともかく、喫茶店のソファでこの漫画を読むあいだ、わたしは眼そのものになっていた。最後のページを閉じたところで、がばっと身体に戻り、そのことに気づいた次第。


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