シチリア! ひどすぎる、世界を侮辱するなんて』(1998, 66min)
 Sicilia! Troppo male offendere il mondo


イタリアの作家エーリオ・ヴィットリーニ(Elio Vittorini, 1908-1966)の小説シチリアでの対話』(Conversazione in Sicilia)(1941)に基づく映画。


十数年ぶりに故郷のシチリア島に帰ったシルヴェストロと人々の対話を中心にした構成で、1930年代半ばのシチリアにおける労働者の貧窮と生活を描く。原作では、作品の背景に、反ファシスト政権の意図が隠されている。ただし検閲の厳しい時代に書かれた作品の常として、ヴィットリーニは二枚舌戦略を駆使しており、表向きにはあからさまに反ファシスト政権は表明されていない。映画も、原作における会話に忠実に作られており、表面的には原作者の意向は見えない。しかし観る側がいくつかの鍵を手にすることで、ヴィットリーニの反時代的考察が浮き上がって観える。


原作小説は、『シシリー島の憂鬱』文藝春秋社、1953)として邦訳されている。


追記:ヴィットリーニの小説は、2005年2月に、岩波文庫から鷲平京子氏による大部の解説をつけて新訳が刊行されている。


⇒作品メモランダム > 2005/02/17
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050217