cinema
第4回「みんなのつぶやき文学賞」結果発表会の「海外篇」で、ペ・スア『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』(斎藤真理子訳、エクス・リブリス、白水社、2023)の紹介を担当しました。 原書の書誌は下記の通りです。 배수아『멀리 있다 우루는 늦을 것이다』…
ele-king編集部編『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(Pヴァイン、2023/08)に『イグジステンズ』(1999)について書きました。 近未来のゲームを描いた映画ですが、幸か不幸か、現実のゲームはまだ『イグジステンズ』の水準に…
ライアン・プロウズ監督『ローライフ』(アメリカ、2017)が、東京は新宿のシネマカリテで上映中です。 ご縁あって、twitterの公式アカウントにコメントを寄せました。 タランティーノの『パルプフィクション』を楽しんだ人には、あの衝撃をもう一度ですよと…
短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト 2022』(渡辺信一郎監督、2017)
ミア・ハンセン=ラヴ監督の『未来よ こんにちは』(L'Avenir、2016)の公開が始まりました。配給はクレストインターナショナル。 (*画像はクレストインターナショナルのウェブサイトからのリンク) フランスで高校(リセ)の哲学教師を務める主人公ナタリ…
★『世界一美しい本を作る男――シュタイデルとの旅』(新潮社、2015/09) おお、もうすぐ刊行されるようですね。これは楽しみ。 世界最高峰の本作りの現場、シュタイデルはドイツの地方都市で印刷までこなす、40人ほどの出版社。ギュンター・グラス、ロバート…
『ミルク』『J・エドガー』などの脚本家ダスティン・ランス・ブラックのカードを用いたシナリオ創作術。 KJ法(カードを用いた整理法)にも通じていそうなこの手法、時系列に展開する物語だけでなく、途中で条件によって状態が分岐するゲームを組み立てる上…
スタジオジブリの映画を観ると、「もっと丁寧に生活しよう」という気持ちをそそられます(全部が全部というわけではありませんが)。 といっても、ジブリのアニメーションを観て、なにか道徳的なメッセージを読み取ったとか、そういうことではありません。 …
★ジョセフ・ヒレル監督『ミース・ファン・デル・ローエ』(ESCOLA、2005/12、REDV-00333、amazon.co.jp) ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe, 1886-1969)のアメリカ移住後の作品を中心に紹介するドキュメンタリー映像。門弟たちやレ…
作家アーサー・C.クラーク(Arthur Charles Clarke, 1917-)はH.G.ウェルズ(Herbert George Wells, 1866-1946)の名作『宇宙戦争』(The War of the World)(1898)に寄せた序文で、物語の結末を明かしながら「本書の結末を明かしてしまったが、このくらい…
★『愉しき哉人生』(77min, 1944) 冒頭、縦書きで「撃ちてし止まむ」の一文がスクリーンに映り、戦時中の作品であることが思い起こされる。それにしても国策に諸手をあげて大賛成、という作家ならいざ知らず、必ずしもそうではない作家は戦時下という状況で…
★『ライフ・イズ・ミラクル』(154min, 2004) ZIBOT JE CUDE 古来、色恋に騒動はつきもので実生活はもちろんのこと、創作の世界にもゴマンと例がある。 古くはホメロスの作といわれる『イリアス』(成立は前8世紀とも)などは、色恋とそれが引き起こす騒動…
★『ソドムの市』(2004) 『リング』『女優霊』の脚本家・高橋洋(たかはし・ひろし)氏の監督作品『ソドムの市』(2004)を観る。 合成画面であることやワイヤー、無理な設定(30代が10歳の子供を演じるなど)を隠そうともしないチープな演出、全編にちりば…
★『成瀬巳喜男——記憶の現場』(2005, 94min) 関係者たちへのインタヴューをつうじて映画監督・成瀬巳喜男(なるせ・みきお, 1905-1969)に迫る一作。 登場するインタヴュイーは、淡島千景、草笛光子、小林桂樹、司葉子(以上は俳優)、秋森直美(美術監督)…
★『めし』(1951) 林芙美子(はやし・ふみこ[林フミコ]、1903-1951)が晩年に「朝日新聞」で連載していた小説『めし』(絶筆)を原作とする映画。大阪天神の森に住む或る夫婦のかわりゆく関係を描く。 狭い炊事場で朝食を用意する三千代(原節子)をよそに…
★『浮雲』(1955, 124min) 焼け野原となった東京にぽつりぽつりと残る家。幸田ゆき子(高峰秀子)は、その一軒をたずねる。玄関に出てきた女性に、農林省から富岡に会いにきたと来訪の意図を伝えるゆき子。家の主富岡兼吾(森雅之)があらわれ、二人は焼け…
★『死者との結婚』(1960) 身重の石井光子(小山明子)はビルの屋上から身を投げようとしていた。傍にいる男(高野真二)が言う。「そうしてくれたら手っ取りはやくてこちらはありがたいんだぜ」。飛び降りを止めた光子は、生きることを選ぶのだった。しか…
★『描くべきか愛を交わすべきか』(98min, 2005) Peindre ou faire l'amour アルノー・ラリユーとジャン=マリー・ラリユー兄弟監督作品。 天気予報士の仕事を早期退職したウィリアム(ダニエル・オートゥイユ)と会社経営をする傍ら絵を描く趣味をもつマド…
★『オペレッタ狸御殿』(2005) がらさ城城主・安土桃山(平幹二朗)はこの世で一番美しい者を自負する男。おかかえ予言者びるぜん婆々(由紀さおり)に「生きとして生けるもので一番美しいのは誰じゃ?」と問うのが日課。日頃は「それは安土桃山さまでござ…
★『ヴァンダの部屋』(178min, 2000) No Quarto da Vanda ペドロ・コスタ(Pedro Costa, 1959- )監督作品。 前作『骨』に出演したヴァンダ・ドゥアルテとその家族の生活を中心に、リスボン郊外のフォンタイーニャス地区の出来事を映した作品。 狭い路地が…
★『骨』(94min, 1997) Ossos リスボン郊外にあるスラム街。狭い路地にひしめきあう家のひとつにその男(ヌーノ・ヴァス)は住んでいる。若者は、職もなく食べるあてもなければ働く意志もなさそうだ。店のゴミ箱で食べ物を漁る生活を送る男。そこへ病院には…
★『にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻』(96min, 1973) 上記作品の第二部。夜行列車(の貨車)にまぎれこんで東京を脱出した三銃士のその後の話。 それぞれの出自と苦境を後にした三人は、列車に運ばれるままたどり着いた新天地・博多でまたまた一騒…
★『にっぽん三銃士 おさらば東京の巻』(88min, 1972) 48歳戦中派・元帝国陸軍中尉でいまはしがない編集長。小説を書こうと妻子の白い目もいとわず原稿用紙ばかり山のようにもっている・黒田忠吾(小林桂樹)。 36歳戦後派・医学博士で助教授とエリートコー…
★『ミリオンダラー・ベイビー』(133min, 2004) 「ボクシングってのは自然に反した行動なんだ」声が囁いた。「おれが言ってることがわかるか? ボクシングは、何もかも生きることに反している。左に動きたいなら、左側に踏み出してはいけない。右の爪先を出…
★『顔役暁に死す』(97min, 1961) 丘倉市長に再選された佐伯大三(林幹)をスナイパーの銃弾が襲う。佐伯市長は倒れ、スナイパーを現場に薬莢を残して去った。 そこへ佐伯の息子佐伯次郎(加山雄三)がアラスカから帰国する。自宅には次郎の不在中に佐伯の…
★『暗黒街の弾痕』(74min, 1961) 去る2005年02月19日に亡くなった岡本喜八(おかもと・きはち, 1924-2005)監督、1961年の作品。 コマツモータースの新型高性能エンジンのテスト中、ドライヴァー草鹿一郎(三島耕)は、何者かの追跡をうけ、運転をあやまっ…
★『さよなら、さよならハリウッド』(113min, 2002) HOLLYWOOD ENDING ウディ・アレン(Woody Allen, 1935- )、2002年の作品。 かつてはアカデミー賞にも輝いた映画作家ヴァル・ワックスマン(ウディ・アレン)もいまでは時代がかわって落ち目の売れない男…
★『永遠のハバナ』(Suite Habana)(84min, 2003) 台詞や解説を抜きに、ハバナに暮らす人びとの一日を映した作品。 一日とは起きてから眠るまでのあいだ、朝食をとり、学校や職場に移動し、勉強や仕事に従事し、昼食をとり、仕事をし、家に帰り、入浴、自…
アンゲロプロスの新作『エレニの旅』を観にいったら、ジャン=リュック・ゴダールの『Notre Musique』予告編が流れていた。 日本でも日仏学院などで先行的に上映されているこの作品、秋には一般公開される様子で未見のわたくしはいまから心待ちにしている一…
★『エレニの旅』(170min, 2004) ΤΡΙΛΟΓΙΑ: ΤΟ ΛΙΒΑΔΙ ΠΟΥ ΔΑΚΡΥΖΕΙ テオ・アンゲロプロス(Θεοδωροσ Αγγελοπουλοσ, 1935- )の『エレニの旅』を観る。 1919年、赤軍のオデッサ入城によってかの地に暮らしていたギリシア人の一団が、難民としてテサロニキに…